インターネットラジオの代表格である「ポッドキャスト」の魅力はどこにあるのか。その配信者であるポッドキャスターへのインタビュー連載「ポッドキャスターに聴く」。
第9回は、『裏技英語』のパーソナリティであるBJ Foxさんと石井てる美さんに話を伺いました。
番組づくりで心がけていることは「Less is more(少ないほど豊かである)」。300回近くに渡り配信を続け、昨年には書籍も出版した『裏技英語』のおふたりに、ポッドキャストを始めた経緯や番組制作の裏側についてお聞きしながら、音声メディアの魅力や今後の目標を語ってもらいました。
『裏技英語』が語る音声メディアの魅力
本記事では、『裏技英語』のパーソナリティであるBJ Foxさんと石井てる美さんに、ポッドキャストをはじめとする音声メディアの魅力を伺っていきます。
番組紹介:『裏技英語』
『裏技英語』のパーソナリティは、スタンダップコメディアンのBJ Foxさんと、お笑い芸人の石井てる美さん。それぞれ外資系企業での勤務経験を持つふたりが、シビアな外資系企業で生き延びるためのコミュニケーションの「裏技」を紹介する番組です。
面白さと役立つ情報の両方を提供
──『裏技英語』はどのような番組ですか?
石井てる美(以下、石井):軽めのタッチながら内容は奥深いビジネス英語学習ポッドキャストです。外資系企業での勤務経験を持つふたりのコメディアンがパーソナリティで、心地良いテンポを意識しながら、笑える要素盛りだくさんでお送りしています。

BJ Foxさん(左)と石井てる美さん(右)
──『裏技英語』を始めたきっかけは何ですか?
石井:私とBJ Foxが東京都内の英語コメディライブで出会い、意気投合したことがきっかけです。BJ Foxは以前から別のポッドキャスト番組を配信しており、私は英語教育に熱心だったこともあり、自然な流れで番組がスタートしました。
私は、お笑い芸人になる前にコンサルタント企業で働いていました。当時経験した「学び」や「コミュニケーションの苦労」をリスナーに伝えたいという思いがあり、面白さと役立つ情報の両方を提供することを心がけています。
──番組はどんな人が聴いていますか?
BJ Fox:番組のローンチ時には『外資系裏技英語』というタイトルで、おもに外資系企業で働く方々を対象に配信していました。
しかし、イベントの開催やリスナーさんからの反応を通じ、学生さんから日本人の英語教師まで、幅広い上級英語学習者に聴いていただいていることが分かりました。そのため、「外資系」という表現を外し、現在の『裏技英語』というタイトルで運営しています。

イベントの様子
石井:リスナー層で特に驚いたのは、企業の幹部クラスの方々が多いことです。中には外資系企業の日本法人カントリーマネージャーの方もいて、LinkedInで繋がる機会もあります。
また、公開収録を行った際には、中国人や台湾人のリスナーさんも聴いてくださっていました。彼らは英語学習だけでなく、日本語学習の一環としても活用しているようです。
大事なのは番組の根本を忘れないこと
──番組づくりで大事にしていることは何ですか?
石井:雑談と構成のバランスを大切にしています。構成をしっかりつくっているからこそ、番組づくりがスムーズになり、これまでに300回もの配信を続けることができました。
また、番組の根本を忘れないことも重要だと考えています。スポンサー案件などのお話をいただくこともありますが、最初に自分たちがつくりたかった番組の本質を守り続けることを何より大切にしています。
BJ Fox:エピソードの長さにもこだわっています。つい話が長引いてしまうこともありますが、エピソードは常に30分以内に収まるように心がけています。コンパクトにまとめることで、リスナーさんが気軽に聴けることを意識しています。「Less is more(少ないほど豊かである)」という考え方も大切にしています。
──番組づくりにあたって参考にした番組はありますか?
石井:バイリンガル対話の構成については『バイリンガルニュース (Bilingual News)』を参考にしました。しかし、上級英語学習者向けの番組や参考にできるコンテンツは少なくて、それが『裏技英語』をつくるきっかけとなりました。
──よく聴く番組があれば教えてください。
BJ Fox:イギリス発の英語ポッドキャストをよく聴いています。『The Rest Is Entertainment』や『The Comedian’s Comedian Podcast』、『The Totally Football Show』など、イギリスのサッカーやニュースの番組が多いです。
番組の継続には長期的な視点を
──初めて『裏技英語』を聴く方におすすめの回はありますか?
石井:300回近く配信しているので選ぶのは難しいですが、あえて挙げるなら「Episode #102: いい結果を出したときに言いたいEven If I Do Say So Myself!」です。“自分で言うのも何ですが”という意味ですが、実績をアピールするのが得意ではない日本人にとって、このフレーズは役立つかもしれません。
どんなに自慢話をしていても、最後に”Even if I do say so myself”をつけるだけで非常に謙虚に聞こえるのです。このエピソードは、良いフレーズの紹介と仕事上で大切なメンタリティの両方を取り上げた自信作です…even if I do say so myself。
──番組を運営するにあたり、『裏技英語』ではどのようなマネタイズの取り組みを行っていますか?
BJ Fox:本の出版や公開収録イベント、メンバーシップを行っています。また、ホストリード広告(パーソナリティ読み上げ型広告)にも取り組んでいます。どんどんスポンサーを増やしたり、テレビ番組化にも取り組みたいですね!
──今後の目標について教えてください。
石井:継続とプロセスの効率化が鍵ですね。これまでに300回の配信を達成し、さらにAmazon Originalsのスピンオフ版も2年間続けてきました。
そして昨年には、『裏技英語~Thriving & Surviving in the International Workplace~』と書籍化も実現することができました。

書籍「裏技英語~Thriving & Surviving in the International Workplace~」
楽しい趣味として始めたものが、ここまで大きな事業へと成長してきたことに感謝しています。今後も日本のポッドキャスト業界と共に、さらに成長し続けてきたいと思います。
──これからポッドキャストを始める人へのアドバイスをお願いします。
BJ Fox:僕らの100回目のエピソードでは、「継続は力なり」の英訳として “Practice Makes Perfect” を紹介しました。最初の半年だけでなく、最初の2年間という長期的な視点で取り組むことが大切です。もちろん、継続するためには制作プロセス自体を楽しくすることも欠かせません。継続を意識しながら、ぜひ番組づくりを楽しんでください!
取材を振り返って
300回近くにわたりポッドキャスト配信を続ける裏技英語のおふたり。番組の構成から雑談にまでリスナーのことを考えた工夫がこらされており、番組制作への強い思いが伝わってくる取材でした。
裏技英語
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連載「ポッドキャスターに聴く」では、今後もいろいろなポッドキャスターの方々にお話をお聞きしていく予定です。その他の記事も「ポッドキャスターに聴く」の一覧ページからチェックしてみてください。