2025年に広告予算を削減すると回答したマーケターは過半数に。ニールセン調査

米ニールセンの調査で、世界17市場・1,400人のマーケターのうち54%が、2025年に広告予算を削減すると回答しました。限られた予算で成果を上げる動きが本格化しています。

2025年に広告予算を削減すると回答したマーケターは過半数に。ニールセン調査

引用元:2025 Annual Marketing Report

広告費削減は「予想外」ではなく「想定内」

ニールセンの調査によれば、2024年に広告効果が比較的堅調だったことから、マーケターの多くは2025年の予算縮小をある程度予測していました。さらに世界経済の不確実性が追い打ちをかけたことで、その方針はより明確になったといいます。実際に、世界17市場・1,400人以上のマーケターのうち54%が「2025年は広告費を削減する予定」と回答。すべての地域・業界で同様の傾向が見られました。

ただし、その背景には地域ごとの事情があります。

  • IT業界では、サプライチェーンの混乱や物流不安に備える動き

  • 金融業界では、消費者信頼感の低下や米国の住宅市場の冷え込み

  • ヨーロッパ地域では、経済停滞やウクライナ情勢の影響への対応

それぞれの業界や地域が抱える課題に対して、広告費は真っ先に調整対象となっています。

しかし、低予算が必ずしも成果の低下につながるとは限りません。むしろ、「限られた予算で成果を出す」ことがマーケターにとって前提条件になりつつあるのが、今の広告業界の空気感です。

そのために求められるのは、効果測定が可能で、効率よく成果につながるメディア選定。つまり、「なんとなく出す」広告ではなく、「確実に投資回収できる場所にだけ出す」広告へと、思考と実行の両面での変化が求められています。

2025年に広告予算を削減すると回答したマーケターは過半数に。ニールセン調査

引用元:2025 Annual Marketing Report

チャネルごとの再評価が進行中

今年、多くの広告主が予算削減を見込む中でも、デジタルチャネルへの投資は引き続き増加傾向にあります。ただし、2025年のレポートでは、その勢いにやや陰りが見られます。ソーシャルメディア、ディスプレイ広告、動画広告、検索連動型広告といった主要なチャネルは依然として上位に位置していますが、「50%以上の予算増」を計画する割合は前年よりも減少しています。出稿先の一極集中を見直す動きが広がっているようです。

一方で、従来型のチャネルに対する関心も高まりつつあります。とくに屋外広告では、16%の広告主が「50%以上の予算増」を予定しており、前年比で3ポイントの上昇が見られました。コロナ禍で低迷していたフィジカルな接点が、再び出稿先として注目されています。

また、ポッドキャストは前年比で微減、ストリーミングオーディオは横ばいとなったものの、“ながら聴取”による自然な接触や親しみやすさが評価され、音声チャネルとして一定の支持を維持しています。

2025年に広告予算を削減すると回答したマーケターは過半数に。ニールセン調査

引用元:2025 Annual Marketing Report

AIによってメディアプランは“人間の手”を離れるのか

2025年、マーケティング業界で最も注目されているキーワードのひとつが「AI」です。ニールセンの調査では、コンテンツの作成からキャンペーンのパーソナライズ、メディアプランの最適化、予測分析に至るまで、あらゆるマーケティング機能においてAIが活用され始めている実態が浮き彫りになりました。

メディア業界大手GroupMのCEO、ブライアン・レッサー氏は「5年以内に、人間がメディアプランに関与することはなくなる」と発言し、大きな反響を呼びました。一見するとセンセーショナルなこの発言も、実際には多くのマーケターが「AIの導入によってルーティン業務が効率化され、自らはより戦略的・創造的な業務に時間を割けるようになる」と前向きに捉えています。

特に、広告予算が大きい大手ブランドにとって、AIはすでに“業界の必須トレンド”と位置づけられており、活用が進む一方で、小規模ブランドとの価値観の違いも見えてきました。レポートによれば、スモールブランドは「持続可能性」や「目的志向マーケティング」に加え、インフルエンサーや“本物志向”のコンテンツへの関心が高い傾向にあります。AIによる自動化で効率を追求する大手ブランドとの差別化戦略として機能していると考えられます。

2025年に広告予算を削減すると回答したマーケターは過半数に。ニールセン調査

引用元:2025 Annual Marketing Report

デジタルチャネルとは

デジタルチャネルは、インターネットやデジタル技術を活用して情報や広告を届ける媒体のことです。代表的なものには、ソーシャルメディア、動画広告、ディスプレイ広告、検索連動型広告、メール、ストリーミングオーディオなどが含まれます。ユーザーの行動データを基に配信を最適化できる点が特徴で、近年は広告主にとって主要な出稿先となっています。

参照元:2025 Annual Marketing Report

AMI(エイミー)

AIに予算配分を任せるのが普通になったら、人間の「勘」や「経験」ってどこに行くんだろ。