近年、インターネットの音声メディアのユーザーは世界的に成長しており、それと連動して音声広告市場も米国を中心に中心に拡大しています。
現在、音声コンテンツや音声広告市場には大手IT企業を中心に様々な企業が参入を進めています。世界最大のオンラインショッピングのプラットフォームを提供するAmazonも、そんな音声広告に参入を始めている企業の一つです。この記事ではAmazonの音声広告について詳しく解説していきます。
Amazon音声広告とは?
Amazon音声広告とは、AmazonMusicの無料ユーザを対象に配信される音声広告のことです。Amazon Musicのサービス全体では、2020年1月時点で全世界での利用者数5,500万人以上とされています。
Amazon Musicの曲と曲との合間に音声広告が挿入される仕組みになっており、自社ブランドの認知拡大や商品の購買促進を行うことができます。
Amazon Musicの広告付き無料サービスで音声広告を活用することにより、画面の枠にとらわれず、ブランドのリーチを拡大することができます。これらの広告は楽曲の合間に再生され、EchoやFire TVなどのAlex対応デバイスのほか、モバイルおよびデスクトップでAmazon Musicの無料サービスを視聴するオーディエンスにリーチすることができます。
Amazon音声広告は現在、一部の国限定で音声広告がスタートしている状況です。
Amazon音声広告の基本的な仕様
Amazon音声広告の仕様は以下です。
・音声広告の長さは10秒~30秒。
・ノンスキッパブル(スキップ不可)
・課金方式はインプレッション(CPM)課金
・様々なデバイス&Amazon製ハードウェアで配信できる
・バナーも同時に表示可能。クリッカブルな音声広告
以下に具体的に説明をしていきます。
1.音声広告の長さは10秒~30秒
Amazon音声広告で配信できる音声広告の探さは10秒~30秒の間です。秒数は自由に設定でき、任意の秒数のCM音源を使用できます。10秒未満のものや30秒を超える長さの音声広告は配信できません。このあたりはAmazonMusicの競合にあたる、音声サービスSpotifyの音声広告の長さが30秒以内という仕様なので、それとほぼ同様の仕様といえます。
なおこの秒数が30秒である理由は、20秒〜40秒が一般的な日本のラジオCMと異なり、米国のラジオCMの長さが30〜60秒であることが関係していると思われます。
2.ノンスキッパブル(スキップ不可)
Amazonの音声広告はその他のデジタル音声広告と同様にスキップができない仕様となっています。ノンスキッパブルな音声広告では、スキップ可能なYouTubeの動画広告などと比べて、広告の完全再生率が100%に近い数値になり非常に高くなるのが特徴です。
Amazon音声広告ではAmazon Musicの無料版において3曲〜5曲に1回の頻度で音声広告が再生されます。
3曲再生した後に、広告ポッドと呼ばれる最初の広告が再生されます。この広告ポッドの後、ミュージックステーションはさらに5曲再生し、その後別の広告ポッドが発生します。リスナーがステーションを変更しない場合、リスニングセッションの間、この再生パターンが継続します。
3.課金方式はインプレッション(CPM)課金
課金方式は配信に応じて課金が決まるインプレッション(CPM)課金です。音声広告が再生された再生回数に基づいて広告費用の課金が行われます。この金額単価はCPM(Cost Per Mile)で算出されます。
ノンスキッパブル(スキップ不可)な音声広告は、「完全再生単価」で考えるとスキッパブルな動画広告などと比べて非常にコストフォーマンスが高い広告媒体です。
4.様々なデバイス&Amazon製ハードウェアで配信できる
Amazon製品を含む、様々なデバイスで配信できるというのも特徴です。Amazonの音声広告はAmazon Musicに配信されるので、Amazon Musicが再生できるデバイスやメディアであれば、基本的に音声広告を配信できます。
具体的には以下のようなデバイス・ハードウェアで配信されます。
- PC
- スマートフォン
- タブレット
- Amazon Echo Dot(ALEXA搭載スマートスピーカー)
- Amazon Echo Show(ALEXA搭載スマートスピーカー)
- Fire TV
5.バナーも同時に表示可能。クリッカブルな音声広告
音声広告配信時にバナーが音声広告と同時に表示されます。Fire TVなど、Amazon Musicを表示できるデバイス・メディアで配信を行う場合、音声とともにコンパニオンバナーを表示させることができます。(「コンパニオンバナー」とはインストリームの動画広告や音声広告に同時に表示されるバナーのことです。)
コンパニオンバナーは、Echo Showデバイス、Fire TV、およびモバイルやデスクトップに表示されます。オーディエンスは、Amazon Musicの広告付きサービスで広告が再生された後にバナーをクリックすることができます。
バナーが音声広告とともに表示されることで、音声だけではなく視覚的にも自社サービスの訴求を行うことができるほか、CTR(クリック率)を計測することで広告の性能の比較や検証にも活用することができます。
Amazon音声広告を配信できる国
現在、日本では買い付けを行うことはできません。
現在(2022年2月現在)では以下の3ヶ国のみでAmazon音声広告を配信できます。
・アメリカ
・ドイツ
・イギリス
Amazon音声広告の3つの海外事例
ここからはAmazon音声広告の海外事例を3つご紹介します。
1.Samsungの事例
Samsungは自社スマートフォン「Galaxy S10 Lite」の発売に伴い、音声広告の配信を英国で行いました。音声広告の配信は、AlexaやFire TVなど様々なデバイス・メディアを通じて行われました。
そこから測定された効果は以下の通りです。
Samsungは、掲載枠全体で家電製品のお客さま1,100万人以上にリーチし、カテゴリー内の商品詳細ページ閲覧率のベンチマークを41%上回りました。音声広告ではオーディオ再生完了率98%を達成し、商品の認知度が18%上昇、オーガニックインプレッションは64%上昇しました。Galaxy S10 Liteの商品閲覧数が763%上昇し、amazon.co.ukでのキャンペーン後の売上が29%増加しました。
(尚、ディスプレイ広告は、Amazon.co.ukでのSamsung S10 Lite販売台数の20%に影響を与えました。ローワーファネルのコンバージョンはディスプレイ広告のハロー効果によるメリットを得て、スポンサー広告の広告費用対効果(ROAS)が前週比で206%上昇しました)
この事例はあくまで、Amazonの動画やバナーといった視覚の広告とあわせて行われたキャンペーンの結果であるものの、その主な効果をまとめると、
・自社サイトのGalaxy S10 Liteのページの閲覧率41%増加
・商品の認知度18%増加
・閲覧数が763%上昇
・Galaxy S10 Liteの売り上げ29%増加
という効果が出ています。
2.某有名証券会社の事例
某有名証券会社の事例では、若者世代をターゲットに、自社の認知度や顧客の購買意欲を高めるべく音声広告とのAmazonの動画ストリーミング広告の配信が行われました。測定された効果は以下の通りです。
Amazon Advertisingのキャンペーンは、「ビジネスをできる限りシンプルに」と掲げるこの会社のブランドの認知度を6.0%上昇させるのに役立ちました。これに加え、キャンペーンでは、Kantar Financial Servicesの標準的なベンチマークをメッセージ連想で1.3倍、購入意欲で1.4倍上回りました。
効果をまとめると、
・認知度6%増加
・キャッチフレーズの連想度1.4倍増加
・購入意欲1.4倍に増加
という効果が現れています。
3.Master Cardの事例
大手金融企業のMaster CardはAmazon音声広告を利用して、タッチ決済による非接触型決済の利用を推進しました。
結果は以下の通りです。
キャンペーンの結果、助成想起が5.1%向上し、非接触・タッチレス機能の利用意向が10.8%向上しました。このキャンペーンでは、助成想起と利用意向に加えて、「安全に配慮する」ブランドとしてのMastercardのブランド認知度が8.1%向上しました。
引用:MastercardがAmazon Advertisingと協力して「Stand Up To Cancer」に貢献|Amazon Advertising
まとめると、以下のような効果が出ています。
・Master Cardの認知度5.1%増加
・「安全に配慮した企業」としての認知度8.1%増加
・タッチレス決済を利用意欲10.8%増加
まとめ
Amazonの音声広告は、まだ日本では出稿できないものの、Amazon MusicやAlexaを通して数多くの顧客にリーチできる音声広告枠となる可能性があります。
なお、AmazonMusicの音声広告はSpotifyの音声広告の仕様と非常によく似ています。(Spotifyの音声広告については『Spotify音声広告配信』から詳細をご覧いただけます。)
音声広告の多様性や可能性を広げる意味でもAmazonの音声広告の動向を注視しておく必要がありそうです。
その他デジタル音声広告の出稿にご興味がある方はデジタル音声広告媒体資料一覧からご覧ください。