近年、インターネット動画広告の市場は急速に拡大しています。サイバーエージェントの研究機関「オンラインビデオ総研」の調査によると、2021年の動画広告市場規模は、4,195億円(前年対比142%)になるという調査結果が出ています。(*1)
また、DataInteloというアメリカの調査会社によると、世界の短尺動画プラットフォーム市場は、2020年の11億米ドルから2030年には23億米ドルに成長すると予測されます。(*2)
この短尺動画市場を率いているともいえるTikTok(ティクトック)は、世界全体でユーザーが10億人を記録し、日本でも約1,700万人のMAUを突破しました。(*3)
今回は、TikTokの概要をはじめ、ユーザーの特徴や広告の種類について詳しく解説していきます。
*1 参照元:サイバーエージェント、2021年国内動画広告の市場調査を発表
*2 参照元:Global Short Video Platforms Market by Type (Live and Video, Video), By Application (Personal Entertainment, Public Performance, Others) And By Region (North America, Latin America, Europe, Asia Pacific and Middle East & Africa), Forecast From 2022 To 2030
*3 参照元:「2021年に活用を始めないと乗り遅れる」電通天野氏に聞くTikTok活用の今
TikTokについて
はじめに、TikTokの概要からユーザーの特徴について説明します。
TikTokとは?
TikTokは中国企業「Bytedance(バイトダンス)」が運営している、15〜60秒の短尺動画を投稿・閲覧できる動画SNSです。
本サービスでは、無料で動画編集・投稿・視聴、ライブ配信(一部ユーザーのみ)が実施できます。
以下はTikTokに関する統計データです。(2021年時点)
・売上高(2021年): 約580億ドル(前年比70%増)(*4)
・世界統計のアクティブユーザー(2021年): 10億人(*5)
・ダウンロード数(2021年): 世界一ダウンロードされたアプリ(*6)
上記のデータによると、TikTokは世界中で驚異的なダウンロード数を記録しており、SNS全体においても存在感を示しています。
*4 中国バイトダンス、21年増収率は70%に減速=関係筋
*5 「10億人の皆様に、ありがとうございます!!!」(TikTok公式サイト)
*6 App Annie調査「モバイル市場年鑑 2022」
TikTokのユーザーについて
以下はTikTokに関する国内のユーザーデータです。(2021年時点)
・ユーザーの男女比:女性55.9%、男性44.1% (*7)
・ユーザーの割合:国民全体の17.3%(日本で6番目にユーザーが多いSNS)(*7)
・利用時間(1日平均):10代 16分、20代 13.9分、30代 5.4分、40代 4.2分 (*8)
TikTokは若年層の女性から多くの支持を集めています。
また、日本の人口約1億2,500万人(2021年10月1日時点)に対して、国民全体の利用率17.3%から計算すると、TikTokのユーザー数は約2,175万人であることも推測できます。
そしてTikTokユーザーにおける購入意欲は他社SNSより高い傾向にあります。
主要なSNSユーザーの購入意欲に関する海外調査では、TikTokのユーザーのうち20.6%がプラットフォーム内で何かを購入したことがあり、他SNSと比べ最多の結果になりました。調査結果ではTikTokの次はYouTubeで16.6%、またInstagramで16.4%の結果でした。(*9)
さらに、購入予定がなくても、TikTokユーザーの67%が同サービスを見ているうちに「何かを買いたくなる」と答えました。(*10)
若年層の利用が多いこと、また購入意欲の高いユーザー傾向もあるため、TikTokは企業にとって不可欠なマーケティング手段になりつつあります。
*7 総務省「令和2年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」
*8 【スマートフォンでの情報収集に関する定点調査2021】スマートフォンの利用時間は昨年に続き1割増、SNSが利用時間の拡大をけん引メディアジャンルはコロナ禍2年目で巣籠もり需要に変化
*9 How does TikTok commerce stack up against Instagram and Facebook?
*10 Marketing Science US Holiday Shopping Research, conducted by Walnut Unlimited, Feb 2021
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TikTokが流行した背景
TikTokが世界的に流行した背景は以下の3点が考えられます。
- 投稿の気軽さ
- 動画の短さ
- 拡散力の高さ
それぞれについてご紹介します。
1.投稿の気軽さ
TikTokはサービス内で撮影から編集、公開まで完了できます。本サービスでは、数万に及ぶ楽曲や豊富なエフェクトがあるため、ユーザーが選定に悩まず、気軽に投稿できます。TikTok内の動画のスタンダードである15秒尺の短さも、企画から投稿までの時間が短くなっている要因と考えられます。
一方YouTubeは、アップロード機能が搭載されながらも、撮影と編集には別サービスを使用する必要があります。動画の尺も自由なため、YouTubeに動画を投稿するのに撮影から編集、投稿まで多くの時間を要し、動画投稿に対するハードルが高いです。
そのため、YouTubeと比較すると、TikTokのほうが動画を投稿する気軽さがあります。
2.動画の短さ
TikTokは15秒程度の短い動画が次々に流れてくることから、「暇つぶし」に最適なアプリケーションです。次から次へと進む手軽さと豊富なジャンル数から、時間を忘れて楽しむことができると考えられます。
また、短い動画であることから、「スキマ時間」で利用できます。たとえば、電車・バスの待ち時間や、休憩時間といったスキマ時間にTikTokは適しています。
このように、動画が短いことで「暇つぶし」として利用でき、「スキマ時間」で動画を視聴できるサービスです。
3.拡散力の高さ
TikTokは動画を拡散させる独自のアルゴリズムを活用してます。Instagramの場合、フォロワー数が少ないと、投稿が拡散されにくいアルゴリズムです。一方、TikTokの場合はフォロワー数が少なくても、動画の内容が「面白い」と判断されたら、多くのユーザーに届けるアルゴリズムとなっています。他のSNSとは拡散の仕組みが異なるため、多くの新規ユーザーを魅了していることがわかります。
また、この拡散力の高さによって雑誌『日経トレンディ』2021年12月号の特集「2021年ヒット商品ベスト30」で、「TikTok売れ」が1位に選ばれました。TikTokは今や動画を拡散させるだけでなく、消費の拡散にも繋がっています。
参照:【最新】TikTokのアルゴリズムとは?重要指標や再生数が伸びない原因を解説 (studio15.co.jp)
21年ヒット商品1位は「TikTok売れ」 動画で消費を動かす:日経クロストレンド (nikkei.com)
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TikTokの広告種類について
TikTokの広告とは、TikTok上で表示できる広告です。
本サービスで主に使われている以下3種類の広告を解説します。
- 起動画面広告(スプラッシュスクリーン広告)
- インフィード広告
- ハッシュタグチャレンジ広告
1.起動画面広告(スプラッシュスクリーン広告)
起動画面広告(スプラッシュスクリーン広告)は、1日1社限定でアプリケーションの起動時に表示される広告です。
起動画面広告は、音声は再生されませんが、静止画が認められています。縦型フル画面広告で、多様な表示形式に対応しています。多くのユーザーに見てもらいやすいため、サービスや商品などの認知を拡大することに繋がります。
2.インフィード広告
インフィード広告は、投稿欄にある「おすすめ」のタブに表示される動画広告です。
インフィード広告の特徴
- 他の広告よりも広告表示時間が長い(約5秒~15秒)
- シェア機能によるユーザーによる拡散が期待できる
投稿欄にある「おすすめ」に表示されるため、コメントや「いいね」などの直接的な反応を確認できます。インフィード広告はユーザーの反応を確認しながら広告の設定を変更し、PDCAを回せます。
3.ハッシュタグチャレンジ広告
ハッシュタグチャレンジ広告は、企業がハッシュタグを、ユーザーが動画につけて投稿する参加型広告です。UCG(User Generated Contents、ユーザー生成コンテンツ)というマーケティング概念にも該当します。
ハッシュタグチャレンジ広告の特徴
- 他の広告と違い、ユーザー参加型による多くの拡散が期待できる
- ユーザーと企業(広告主)の一体感のある広告形態
ユーザー参加型の広告のため、他の広告よりも高い拡散力を持っています。また、商品やサービスのファンを獲得し、親しみを感じてもらいやすくなるでしょう。
TikTokのターゲティングについて
TikTok広告はターゲティングも可能です。
ターゲティング手法は主に4つに分かれています。それぞれのターゲティング手法を使用し、ユーザーに適する広告を配信できます。
①ユーザーリストターゲティング
はじめに、ユーザーリストを利用するターゲティングは、ふたつの種類に分かれています。
ひとつは、既存利用者で広告をクリックした人や自社サイトに訪問した人など、それらのユーザーをターゲティングする広告です。
もうひとつは、「類似ユーザー」です。既存利用者の情報を基に、彼らに共有点のある消費者にターゲティングする手法となります。
②デモグラフィックターゲティング
次に、属性によるターゲティングも可能です。
- 年齢
「13〜17歳」「18〜24歳」「25〜34歳」「35〜44歳」「45〜54歳」「55歳以上」「無制限」のオプションから選定が可能。 - 性別
「男性」「女性」「無制限」から選定が可能。また、男女に向けて配信を実施できます。 - 言語
TikTokアプリの言語設定に伴うターゲティングが可能。 - ロケーション
広告配信の地域を選定。また、国単位だけではなく、都道府県単位でも配信できます。
③興味&行動ターゲティング
ユーザーの興味・行動に依るターゲティングも実施できます。TikTokのサービス内における行動を判別することで、利用者の興味と関心を推測できています。広告配信を設定するときに、「興味」or「行動」のターゲティングが可能ですが、同時配信は不可です。
はじめに、興味関心ターゲティングの概要はこちらです。
興味関心ターゲティング
興味関心ターゲティングでは、TikTokにおけるカテゴリーを選定することで、そのカテゴリーに興味を持つと判断されているサービス利用者に広告を配信できます。
次に、行動ターゲティングの概要はこちらです。
行動ターゲティング
行動ターゲティングを通して、ユーザーがTikTok内で行う行動を基準に広告配信を行えます。
①動画インタラクション
特定の動画を視聴したユーザーにターゲティングする。
②クリエイターインタラクション
特定のクリエイター、もしくはそのクリエイターが属するジャンルのクリエイターをフォローした場合はターゲティングする。クリエイターのプロフィールを閲覧した場合もターゲティングする。
③ハッシュタグインタラクション
特定のハッシュタグの動画を視聴したユーザーにターゲティングする。
④デバイスターゲティング
下記のタブレット端末の情報を基に、ユーザーターゲティングを設定できます。
- システムバージョン(OS)
- キャリア
- デバイス価格
- 通信環境
- デバイスモデル
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さらに詳しく知りたい方へ
本記事では近年の盛り上がりを見せるTikTokの概要から、特徴や広告の種類までをご紹介しました。
TikTokのような動画配信サービスは盛り上がりを見せていますが、かつてのテレビとラジオのメディアミックスのようにオンラインラジオやポッドキャストなどの音声メディアと動画広告を連携させて広告配信することもできます。
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起動画面広告の特徴