音声SNSは2021年より急速に利用者が増え、注目を集めています。その背景として同年1月頃に話題になった「Clubhouse」を筆頭に、音声SNSの認知が拡大していることが考えられます。2021年1~2月に実施されたLINEリサーチの調査によると、音声SNS「Clubhouse」の認知は約7割でした。世間の音声SNSに対する関心が高まっていることがわかります。
今回は、音声SNSをテーマに、その特徴やサービス内容について解説します。
音声SNSとは?
音声SNSは、ライブ配信によるリアルタイムの音声配信を、ユーザー間が相互にフォローしたりコミュニケーションをとりながら楽しめるサービスのことです。
代表的なサービスとして、ClubhouseやXスペースといったサービスが挙げられます。
「音声SNS」は、現在進行形で進化を遂げているサービスジャンルです。そのため、その定義にはまだ曖昧な部分があります。英語圏のWikipediaでは「SocialAudio」という言葉で紹介されており、その中で音声SNSの「共通機能」として以下の2点が挙げられています。
- ほかのユーザーと共有された音声録音を介して、リアルタイムで会話できるチャットルーム。
- 従来のテキストと(音声のような)リッチメディアベースのチャット。
音声SNSの魅力について
少しずつ身近になってきた音声SNSはどのような位置づけのサービスなのでしょうか。
ここからは、音声SNSの魅力について深く掘り下げていきます。
- 音声により文字より内容を受け入れやすい
- 配信者とリスナーが双方向で作りあげるライブ空間
- ユーザー同士で音声でやり取りできるチャットルーム
①音声により文字より内容を受け入れやすい
スマートフォンやデジタルデバイスに苦手意識を持たないZ世代にとって、「聞く」という行為は、身近なものとなっています。
普段からイヤホンを通して、さまざまな情報と音楽を聴いている彼ら/彼女らは、「読む」よりも「聞く」ことの方が理解しやすい傾向にあり、音声でのコミュニーケーションに深い親和性を持っているのです。
Z世代は、「通話の方が文字での会話より楽」という回答が男女とも約半数です。また、女性Z世代の45%が「読む」より「聞く」ほうが頭に入りやすいと答え、他世代より10pt以上高くなっていました。テレビの操作やタブレット、スマホなどの音声入力機能の進化とともに育ち、キーボードよりも先に音声入力を覚えた人も少なくないため、音声でのコミュニケーションや情報収集に親和性が高く、好意的な世代であることがうかがえます。
また、インタビュー調査を通じて、気軽に人と会えないコロナ禍で、音声メディアによって気が紛れたり勇気づけられたりした、というZ世代の声も多く聞かれました。特に女性にその傾向が強く、「(深夜ラジオを聴いていると)世の中はまだ人が動いているんだ、と寂しさを紛らわすことができた(20歳大学生)」「雑談配信を聴くと寂しさがやわらいだりするし、暇な時間が暇じゃなくなる(19歳大学生)」など、ラジオコンテンツやポッドキャスト、音声SNSに対する受容性がみられました。
参照元:Z世代に拡がる「音声メディア」、音楽配信は6割が利用~耳をマルチタスクに使い分け、テキストより通話、女性は“人の声”で寂しさ解消~
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②配信者とリスナーが双方向で作りあげるライブ空間
音声SNSには利用者によるライブ配信が可能な媒体が多くあります。そのため、オンデマンド配信のサービスとはやや性質が異なります。
その特徴とは、ライブ配信を通して、配信者とリスナー同士が同じ時間を共有し、その場しか体験できない空間を作り上げられることです。
音声SNSだから実現できるライブ感こそが、ユーザーを惹き付ける要因かもしれません。
③ユーザー同士で音声でやり取りできるチャットルーム
音声SNSは、チャットルーム形式で、ユーザー複数人で一緒に配信できるものもあります。チャットと聞くとテキストを思い浮かべますが、配信者とリスナーを集めた複数人での音声配信とリスナーとのコミュニケーションが行えるイメージです。
また、機能のひとつとして、サービス内で音声にくわえて、通常SNSのような文字チャットが使えることもあります。絵文字やユーザーのプロフィール写真などのビジュアル機能搭載されていることもあります。
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音声SNSが注目されている背景
IT業界の記者・Jeremiah Owyang(ジェレミア・オウヨウ)氏によると、音声SNSはSNSが使われている時代に最も適する方法だと書いています。
日本語でいう「松・竹・梅」で既存SNSを表すと、文字のSNSは「梅」にあたり物足りない感があります。動画のSNSは「松」で、感覚過負荷になりかねません。音声SNSは、「松・竹・梅」でいうところの「竹」にあたり、人間が求めている繋がり・同感し合う場を作りながらも、テキストのみや動画のSNSの欠点を克服できるサービスだと書き表しています。
近年、ZOOMなどの動画通話が普及している現在では、動画通話のコミュニケーションに疲労感を感じはじめている人も多くいるようです。しかし、外出する機会が減っても、人間は繋がりを求めるため、音声SNSはその絶妙なバランスを持ったサービスだと言えます。
I call this the “Goldilocks” medium for the 2020s: Text is not enough, and video is too much; social audio is just right. It represents the opportunity for social connection and empathy without the downsides of video. Why is this use case taking off? – humans, stuck at home during quarantine; readily available smartphones and apps; cloud-based technology and easy integration platforms like Agora; the desire for human connection beyond text; and fatigue from too many video conference calls.
出典:The Future of Social Audio: Startups, Roadmap, Business Models, and a Forecast
海外発の音声SNS一覧
音声SNSの多くは海外のサービスです。
海外発の代表的な音声SNSをご紹介します。
- Clubhouse(クラブハウス)
- X スペース
- Spotify Live(旧Spotify Greenroom)(スポティファイライブ)
- Spoon(スプーン)
【海外の音声SNS:1】Clubhouse(クラブハウス)
出典:Clubhouse
著名人とインフルエンサーがサービスを利用することで、2021年大きな話題を呼んだ「Clubhouse」。
現在はシステムが変わりましたが、注目を集めた2021年初頭の「Clubhouse」には、以下の特徴がありました。
- iOSのみの対応
- 招待制
初期は完全招待制で限られた人しか使用できないサービスであり、そんな希少性もあって一気にブームが巻き起こりました。
「Clubhouse」の構成は、「ルーム」で「リスナー」が「スピーカー」の話を聴くことです。ルームのなかでは、以下の3つの役回りがあります。
- リスナー:ルームの観客であり聴取者
- スピーカー:ゲスト的な話者
- モデレーター:ルームのオーナーであり司会進行役
ルームによっては、「モデレーター」は司会進行の役割を担います。そんなモデレーターから指名されると、リスナーがスピーカーになって、発言もできます。
【海外の音声SNS:2】X スペース
リアルタイムでXの利用者同士が音声を使って会話する「Ⅹ スペース」。
「Ⅹ スペース」には、以下の3つ役回りが存在します。
- ホスト:スペースの主催者
- スピーカー:ゲスト的な話者
- リスナー:観客であり聴取者
ホストは最大10人までスピーカーを招待することが可能です。
「X スペース」の最大の特徴としては、トークの途中でリスナーがリアクションできることがあります。
たとえば、以下のようなリアクションが可能です。
- スピーカーの質問に答える
- リアクションとして絵文字を表示させる
またリスナーが会話に参加したいと思ったときは、ホストに申請できます。
【海外の音声SNS:3】Spotify Live(旧Spotify Greenroom)(スポティファイライブ)
出典:Spotify
ユーザー同士でライブ配信が行えるSpotify(スポティファイ)傘下の音声SNS「Spotify Live」。
ルーム内の別のユーザーたちと、リアルタイムで音声配信とチャットを楽しめるサービスです。
2021年3月にSpotifyが買収した「Locker Room」というサービスをベースに細かな仕様やUIが変更され、ユーザーを拡大しています。また、2022年4月時点で、「Spotify Greenroom」から「Spotify Live」に名称が変更されています。
【海外の音声SNS:4】Spoon(スプーン)
出典:Spoon
個人によるライブ配信が行える、韓国発の音声SNS「Spoon」。
他の音声SNSと異なり、「スピーカー」という配信者のライブ配信に近いサービスです。スピーカーは、以下の3つの種類の配信が行えます。
- LIVE:
リアルタイムな音声配信機能 - CAST:
30秒以上の録音した音声配信機能 - TALK:
お題に対して投稿する30秒までのショートな音声配信機能
他にも原則として、以下のルールがあります。
- 音声のみの配信(映像はなし)
- 配信時間制限:2時間
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日本発の音声SNS一覧
次は日本発音声SNSをご紹介します。
- Wacha(ワチャ)
- Yay!(イェイ)
- Tavern(ターベルン)
- CANDAN(カンダン)
【日本発の音声SNS:1】Wacha(ワチャ)
出典:Wacha
ユーザー同士の共通の趣味によって繋がり、最大8人のトークルームでリアルタイムの対話が可能な音声SNS「Wacha」。
会話内容が48時間で削除され、かつクローズドな環境で会話を進むため、「その一瞬の会話」という魅力があります。
「Wacha」上で、ユーザー同士が繋がることができる趣味として用意されているカテゴリは下記の通りです。
- ファッション
- 音楽
- ライフスタイル
- 恋愛
- 芸能・アイドル
- エンタメ・お笑い
- アニメ
- ゲーム
- 遊び・趣味
- スポーツ
- ビジネス
- キャリア
- 学び・勉強
【日本発の音声SNS:2】Yay!(イェイ)
出典:Yay!
同世代で共通の趣味を持ったユーザー同士が、グループ通話とテキストチャットで繋がることができる音声SNS「Yay!(イェイ)」。
サークルの種類には、以下のようなカテゴリーがあります。
- ゲーム
- アニメ
- 雑談
- 自分磨き
- 音楽
- アイドル
- 悩み相談
- その他
匿名で参加が可能なため、実名利用のSNSに抵抗を感じる利用者でも「Yay!」に参加しやすい傾向にあります。また、サービス利用者の約85%が24歳以下のため、Z世代中心の音声SNSになっています。
【日本発の音声SNS:3】3. Tavern(ターベルン)
出典:Tavern
個人による音声を媒体とする投稿に加え、グループチャットでも投稿可能な音声SNS「Tavern」。
「Tavern」の特徴は以下になります。
- 多人数通話が可能
- アーカイブが残る
- 個人による投稿が可能
【日本発の音声SNS:4】4. CANDAN(カンダン)
出典:CANDAN
ラジオ感覚で個人・複数人による音声配信を実現する音声SNS「CANDAN」。
CANDANの特徴は以下になります。
- スマホ一台で簡単に配信できる
- 配信内でBGMを流すことができる
- 画像を共有できる
- 最大4人でコラボ配信も可能
- 配信者を直接応援できる
配信中に画像を共有できるフォトストリーム機能やBGMを流せるなど、配信者に便利な機能が数多く搭載されています。
\Z世代・若年に響く音声マーケティング/
Z世代に適する音声マーケティングの事例を以下からご覧いただけます。
【デジタル音声広告事例集】Z世代・
若年ターゲティング出稿事例を確認する
マーケティング分野の将来性でTOP3にランクインした音声SNS
従来、SNSの媒体は文章と写真を中心に運用されてきましたが、ここ数年の音声SNSの動きが消費者とマーケティング業界においても注目されています。
たとえば、日経クロストレンドの「トレンドマップ 2022上半期」では、マーケティングの将来性を表すスコアにおいて、「音声SNS」が高く評価されました。
参照:日経クロストレンド「今後伸びるビジネス」2022年上半期ランキングを発表
マーケティング分野の将来性スコアでは「音声SNS」「インフルエンサーマーケティング」「ライブコマース」がTOP3にランクインした。
同社は「音声SNSは『Clubhouse(クラブハウス)』の熱狂的なブームは過ぎ去ったものの、若者の間ではラジオやPodcast(ポッドキャスト)などを聴く習慣が徐々に広がっている。誰でもインターネットラジオを開局できるサービス『Voicy(ボイシー)』や音声通話アプリ『パラレル』なども成長を続けており、今後、音声広告市場の拡大が見込まれる」とコメントした。
米Statistaによると、音声広告の市場は2026年には100億ドル規模の市場に拡大する見込みです。
上記の背景から、日本でも急速に音声メディアの市場が拡大する可能性があります。
音声広告の多様性と可能性を広げる意味でも、音声SNSの動向を注視しておく必要がありそうです。
音声SNSを可能とするデジタル音声にご興味がある方はデジタル音声広告媒体資料及びお役立ち資料一覧からご覧ください。