インターネットラジオの一つである「ポッドキャスト」は世界的にも広告市場が拡大している音声配信手法です。米国のポッドキャスト広告市場は毎年成長を続け2020年には850億円を突破し、デジタル音声広告市場の成長を牽引する音声メディアとなっています。
先日、ネット広告業界団体Interactive Advertising Bureau(インタラクティブ・アドバタイジング・ビューロー)は、2021年のアメリカにおけるポッドキャスト広告についての調査を公開しました。調査内容を通して、海外市場への理解を深めることができ、日本市場の今後の動きについて考えるヒントになる内容が多く含まれています。
今回は、IABによる「U.S. Podcast Advertising Revenue Study(米国ポッドキャスト広告収益の調査)」の中身を解説します。
※本調査レポートは媒体収益で記載されており、表示されている金額数値は媒体社に入るネット広告費です。
ポッドキャストとは?
ポッドキャストとは、MP3などの音声ファイルをインターネット上で公開し音声配信を行うインターネットラジオの配信手法です。
RSSフィードという仕組みを通じてサーバーに上げた音声ファイルの公開を行うことで、複数のプラットフォームで音声ファイルを再生できます。それによって、リスナーは自分の好きな方法で音声コンテンツを聴くことができます。
参照:ポッドキャスト(Podcast)とは?世界的に成長する音声配信の解説
レポートの結果まとめ
はじめに、今回のIABが出しているポッドキャスト広告レポート調査結果の要点として、以下のようにまとめられています。
2021年に史上初めてポッドキャスト広告市場が10億米ドルを突破
①ポッドキャスト広告収益は前年比72%増の14億米ドルを記録。2022年には20億米ドル、2024年には約3倍の40億米ドルを超えると予測。
②収益は、インターネット広告収入市場全体よりも速い成長を続けており、前年比72%増に対して35%増となる。
③ポッドキャストの広告カテゴリーは多様化しており、低コストの広告カテゴリーが増加している「その他」カテゴリーは、わずか2年で3倍以上のシェアを獲得。
④広告主の需要急増に伴い、プレロール広告の収益シェアは2020年の22%から32%に増加。アドテクノロジーへの投資により、ポッドキャスト広告はよりデジタルに対応し、その機能と広告主にとっての価値を拡大。
⑤ダイナミック広告挿入は、広告収益の84%に拡大し、2年間でほぼ倍増。ホストリードとアナウンサーリードの両方が アナウンサーリード広告の大半がダイナミック広告によって配信(それぞれ84%と85%)。広告主にとってより大きなスケール・柔軟性・ターゲティングの正確性を生み出している。
⑥アナウンサーリード広告は、効率的な広告作成と展開が可能なため、広告収入に占める割合が2020年の35%から40%へと成長を続けている。
参照:U.S. Podcast Advertising Revenue Study Full-Year 2021 Results & 2022-2024 Growth Projections
米国のポッドキャスト広告市場は前年比72%増の約1269億円の規模まで拡大し、米国のインターネット広告市場におけるその他の分野よりも成長率が高いことがわかります。 また、アドサーバーから広告を挿入するダイナミック広告(Dynamic Ad Insertion:挿入型広告)が増えている傾向にもあるようです。
レポートより最も注目すべき情報
下記に、本レポートの注目すべき4つの情報についての解説を記載します。
- 米国におけるポッドキャスト広告収益の増加
- 米国におけるポッドキャスト広告市場の成長予測
- ポッドキャスト広告におけるプレロール広告の需要増大
- 15秒~30秒のポッドキャスト広告が一般的になりつつある
①米国におけるポッドキャスト広告収益の増加
年々、米国のポッドキャスト広告収益が増加していることがわかります。ポッドキャスト広告の収益の増加は、SNS広告や動画広告などのようなインターネット広告における成長率と比較すると、ポッドキャスト広告収益の成長率を大幅に上回りました。
また、2021年に初めて10億米ドルを超え、前年比72%の成長率で推移しています。
参照:U.S. Podcast Advertising Revenue Study Full-Year 2021 Results & 2022-2024 Growth Projections
②米国におけるポッドキャスト広告市場の成長予測
米国におけるポッドキャスト広告市場は、2024年までの3年間で、収益はほぼ3倍の42億ドルになると予測されています。また、2022年には20億米ドル、2023年には30億米ドルを超えると予測されています。これらのことから、今後のポッドキャスト広告市場は大幅に成長する見込みです。
参照:U.S. Podcast Advertising Revenue Study Full-Year 2021 Results & 2022-2024 Growth Projections
③ポッドキャスト広告におけるプレロール広告の需要増大
2021年のポッドキャスト広告におけるプレロール広告の収益割合が、全体の32%(2020年は全体の22%)とプレロール広告の需要が増大しています。
レポートに言及されているわけではありませんが、ポストロールも比率が増加していることから、音源にミックスされた広告(Baked In Ads:事前編集型広告)に対して、アドサーバーなどから広告挿入を行うダイナミック広告(Dynamic Ad Insertion:挿入型広告)が増加していることと相関性があるのではと推測されます。
参照:U.S. Podcast Advertising Revenue Study Full-Year 2021 Results & 2022-2024 Growth Projections
④15~30秒のポッドキャスト広告の普及
2021年は15~30秒のポッドキャスト広告が55%と一番多く、30秒以下のポッドキャスト広告が全体の71%を占めています。2020年における30秒以下のポッドキャスト広告が全体の50%であることから、短い尺のポッドキャスト広告が主流になっています。30秒レンジが多いのは、アメリカのラジオCMが一般的に30秒であるためです。
なおこちらもレポート内で言及されているわけではありませんが、前年にくらべて30秒以下のCMが増加している理由は、音源内で読み上げることの多い音源にミックスされた広告(Baked In Ads:事前編集型広告)よりも、アドサーバーなどから配信されるダイナミック広告(Dynamic Ad Insertion:挿入型広告)の比率が増加していることが影響していると思われます。
参照:U.S. Podcast Advertising Revenue Study Full-Year 2021 Results & 2022-2024 Growth Projections
ますます拡大していく米国のポッドキャスト広告市場。日本市場も要注目
以上、米国のポッドキャスト広告収益レポートからの解説でした。
年々、海外ではポッドキャスト広告市場が拡大しており、レポートを通して多くの興味深い発見があります。今後の日本におけるポッドキャスト広告市場の展開にも要注目です。
なお世界には8000番組以上の企業運営ポッドキャストがあるというデータがあります。企業がポッドキャストを運営することの効果なども記載した資料を以下にて提供しています。
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