近年、米国を中心に新しい音声メディアとして成長を続ける音声配信手法「ポッドキャスト」。日本国内でも年々に利用者が増えていて、注目されている音声コンテンツになっています。
その動きと連動して、企業がポッドキャストの運営に参入するケースが増えています。ポッドキャストを通して、企業がリーチしたい特定のユーザー層にブランドメッセージやロイヤリティを向上する手段として活用され始めています。
この記事では、企業が運営するポッドキャスト『ブランデッドポッドキャスト』の概要や、マーケティングやプロモーション手法としてのその効果について解説します。
企業運営のポッドキャスト『ブランデッドポッドキャスト』とは?
ブランデッドポッドキャストとは、ポッドキャストというインターネットラジオ形式で企業が運営する音声番組です。これまでブログなどで行われたオウンドメディアの音声版だと考えるとわかりやすいかと思います。
そもそもポッドキャストとはなにか?と言う人は、インターネットラジオのいち種類であるポッドキャストについては「ポッドキャスト(Podcast)とは?世界的に成長する音声配信の解説」の記事で解説していますので、参考にしてみてください。
★この記事の中で紹介している内容は以下のポッドキャスト音源でも聴くことができます。15分ほどのエピソードなので、移動の合間や仕事のBGMとしてもお聴き下さい。(ブランデッドポッドキャストのデータなどについて話しています)
なぜ世界中で企業の音声配信が爆増しているのか?データで読み解くブランデッドポッドキャスト
1年間で200%!世界で増加するブランデッドポッドキャスト
世界のインターネット人口における月間でポッドキャストを使用するユーザーはカナダのHootSuiteの39カ国を対象とした調査では平均約40%と言われています。つまり、100人いたら40人がポッドキャストを聴いていることになるわけです。
そのような背景もあり、企業が運営するインターネットラジオ「ブランドポッドキャスト」の数が増加しています。
ポッドキャストは番組を始める難易度が低い点も特徴です。RSSフィードを配信するサービス(ポッドキャストCMS)を使用すれば、自社でサーバーもアプリなども用意せず、SpotifyやAmazonMusicなどで聞くことができるインターネットラジオを始めることができるため、その敷居の低さからもインターネットの音声メディアの中でも代表的存在となっています。
世界のポッドキャストランキングのポータルサイトを運営しているChartable(チャータブル)社の2021年8月19日時点のデータによれば、世界のブランドポッドキャストの番組数は8334本です。
同データによれば、その前年の2020年の世界のブランデッドポッドキャストの数は4576番組という調査結果が出ています。そのため、その1年で少なくともブランデッドポッドキャストの数が2倍になっていることわかります。
参照:Chartable(チャータブル)社の2021年8月19日時点のデータ
なお、この調整で計測されているのは、Appleポッドキャスト上で公開されているポッドキャストの数です。この数値だけを見ても世界中に企業運営のポッドキャストの盛り上がりを感じることができます。
ブランデッドポッドキャストが企業のマーケティングに最適な3つの理由
海外の情報なども参考にしつつ、ポッドキャストが企業のマーケティングに最適な理由について紹介していきます。
<ポッドキャストが企業のマーケティング戦略に最適な理由>
- リスナーが増加している
- 完聴率が高い
- 同じコンテンツを繰り返し活用できる
1. リスナー増加による音声媒体への注目性
ポッドキャストが企業のマーケティングに最適な理由の1つ目はポッドキャストのリスナーが現在も増加を続けていることが挙げられます。
statista社の調査では、2021年で8.5億人ほどのリスナーがいるという結果がでており、また、今後ポッドキャストリスナーは2024年時点で10億人を超える規模まで増加すると予想されています。
この成長は2028年まででCAGR(毎年の年平均成長率)が9.9%とも言われるワイヤレスイヤホンの普及と連動していると考えられます。
なお、2024年時点の朝日新聞社とオトナルによる調査によると、日本で1ヶ月に1回以上ポッドキャストを聴くユーザーの割合は15.7%でした。全年代で比較すると、TikTokの利用率と同等の割合となります。
参照元:Number of podcast listeners in the United States from 2017 to 2024
第4回ポッドキャスト国内利用実態調査
Hearable Devices Market Size to Reach over USD 37.37 Billion by 2028 – According Vantage Market Research
2. 音声コンテンツの持つエンゲージメント性
次に音声コンテンツのエンゲージメントの高さが挙げられます。
ポッドキャストはイヤホンなどを使用する場合、耳を塞いでひとつの番組に向き合うように聴くため、複数のブラウザを開くウェブページやSNS などに比較すると、ポッドキャストを聴く方が一対一の関係性になりやすいという特徴があります。
画面上にコンテンツが膨大にあるスマートフォンの普及したインターネット時代に、音声というフォーマットを活用して消費者と一対一の状態を実現しやすい音声メディアは、高いエンゲージメントを実現するという調査結果が英国のBBCの調査からも出ています。
エンゲージメントとは、ブランドとの距離感と好感度に関する指標です。このエンゲージメントに関して、後述します。
3. 長期的に効果を発揮する、コンテンツのアーカイブ性
企業が作成したポッドキャストコンテンツは、マーケティングのためのコンテンツとして複数回使用するができるのも特徴です。
アーカイブされた音声コンテンツは、たとえばYouTubeのように番組配信からしばらく経ってからも、会社のブログやコンテンツ、メルマガなどに挿入することで顧客とコミュニケーションを深めるためのコンテンツ資産として再利用できます。
たとえば、消費者にブランドストーリーを伝える時や難解なコンテンツを分かりやすく伝えたい時などに、以前に収録したポッドキャストを活用することで商品への認知が高まりやすくなります。
このあたりの特性についてはChartable社のブログでも書かれています。
Podcast content is reusable. From a marketer's perspective, podcasts have a high return on investment because they can be repurposed over time and across channels. A single 30-minute episode can be transcribed and posted on a company blog; highlights can be made into audiograms and inserted into a newsletter, then posted on social media out over a series of weeks.
引用:Why branded podcasts are exploding (and why we built Chartable for Brands)
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ポッドキャスト聴取の背景にある聴取環境とその特徴
1. "ながら聴き"に適するコンテンツ
朝日新聞社とオトナルによる「第4回ポッドキャスト国内利用実態調査」によると、87.1%のリスナーが"ながら聴き"をしているという結果が出ています。
つまりポッドキャストを聴く人の多くは、何かをしながらを聴いているということです。
これは、ポッドキャストが一般的な広告が接触しにくい運動中や家事中などのタイミングでも消費者とブランドがコミュニケーションをとることのできるメディアであることを意味しています。
2. 記憶に残り、高いエンゲージメントを発揮するフォーマット
同調査によると、ブランデッドポッドキャストは、その他のコンテンツと比較して、平均して16%エンゲージメントが高く、12%以上の強く記憶に残っていたという調査データもあります。
ブランドデッドポッドキャストで企業と接触したユーザーは、ブランドのことが記憶に残り、ブランドに対して高感度をいだきやすいと言えます。
3. 音声による擬似的な口コミ効果でブランド認知や購買意向が上昇する効果
同レポートによると、ポッドキャストを聴くことでブランドの認知度が89%上昇、ブランド検討が57%上昇、ブランドの好感度が24%上昇という結果があります。ポッドキャストでブランドの商品を認知してから購入に至った利用者も14%向上していたそうです。
同調査によると、ポッドキャストの聴取環境が親密で会話的な性質を持ち、誰かの話を聞いてるような状態になります。そのため、ブランドの言及に対するエンゲージメントが異常に高い状態を生み出すという考察が導き出されています。
参照:Audio:Activated - new BBC Global News study reveals unique effectiveness of branded podcasts
潜在意識に働きかけるブランデッドポッドキャストは企業ブランディングに最適
また、ポッドキャストによって潜在意識に影響を与えることも可能です。
BBCの調査では、エピソードの中で12回「イノベーティブ(革新的)」という言葉を使ったポッドキャストを聞いたユーザーに対して、潜在意識の調査テストが行われました。
その結果は、該当するポッドキャストを聴いた人は、その企業や企業の商品、ブランドなどについて「イノベーティブである」と回答したスコアが6%上昇したという数値が出ています。調査の参加者は、調査の背景を知らずに回答しました。
この結果は、「イノベーティブである」と広告メッセージで伝えなくても、テーマや話題をうまく盛りこむことでブランデッドポッドキャストを通じて企業のブランドイメージ、与えたい印象を潜在意識の中で感じ取ってもらうことができます。
消費者に持ってもらいたいブランドイメージ・キーワードなどの要素をポッドキャストの内容、番組の企画などに活かすノウハウとして参考になるかと思います。
Listeners create subconscious associations with the brand, based on words they hear in the podcast. In our sample, the word “innovative” was mentioned 12 times during the podcast. Listeners were later more likely to call the sponsor “innovative”, showing that they instinctively associate the brand with the message.
引用:Audio:Activated - new BBC Global News study reveals unique effectiveness of branded podcasts
参照:Audio:Activated - new BBC Global News study reveals unique effectiveness of branded podcasts
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企業が運営するポッドキャスト(ブランデッドポッドキャスト)の配信事例
国内におけるブランデッドポッドキャストの事例をご紹介します。
- TOYOTA「トヨタイムズ」
- モルガン・スタンレー
- アドビ
- ヨコハマタイヤ
TOYOTA「トヨタイムズ」
オウンドメディアとして、世界のトヨタニュースや国内の取り組みをはじめ、トヨタが支援する様々なスポーツの紹介など、トヨタの今について解説するニュースを紹介してきた「トヨタイムズ」がついにポッドキャスト『トヨタイムズ Podcast』に。豊田会長の生の声が聴けるエピソードは必聴です。
モルガン・スタンレー
モルガン・スタンレーのポッドキャスト番組『市場の風を読む』。モルガン・スタンレーの専門家たちが提供する市場分析や経済予測は非常に興味深く、専門的でありながらもわかりやすく説明されているため、金融のプロだけでなく一般のリスナーにも理解しやすい内容となっています。
アドビ
『Adobe Experience Cloud ポッドキャスト』はコンピュータ・ソフトウェア会社Adobeが経営者・マーケター向けに配信する番組です。デジタルマーケティングやDXについて、オーディオドラマ形式でわかりやすく学べます。「クッキーレス」の問題や「ヘッドレスコマース」などのテーマについて音声コンテンツを通じて理解を深めることができます。
ヨコハマタイヤ
『きくタイヤ タイヤにまつわるエトセトラ』はタイヤの選び方や重要性をリスナーに伝えると共に、モータースポーツの楽しさを再発見する機会を提供することを目的としています。レーシングドライバーやタイヤ開発に携わる専門家をゲストに迎えて、タイヤとモータースポーツの世界に深く切り込む内容をリスナーに提供しています。
★こちらのブログでも国内外の企業が運営しているポッドキャスト番組の事例をご紹介しています。「企業のポッドキャストが増加中!?音声のオウンドメディア事例」
企業のマーケティングにおける音声コンテンツの活用
この記事でもご紹介したようにポッドキャスト広告は購買意思決定のキーとなるブランド認知向上に効果があります。
オトナルでは日本でも注目されるデジタル音声広告の市場について、『音声マーケティング最前線2024(成長する音声コンテンツとデジタル音声広告市場)』というレポートに市場とその動向についてまとめています。
また企業のポッドキャスト活用の効果やその方法については、企業向けポッドキャスト(ブランデッドポッドキャスト)制作配信支援サービスにもまとめています。
その他、音声広告もデジタル音声広告媒体資料一覧にてポッドキャストでの音声広告の出稿が可能な媒体の資料をご覧いただけます。