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オトナルブログ

1350円ラーメンの「味玉永久券」にみるマーケティング戦略の話。

マーケティング全般

道を歩けば、マーケティング戦略に当たる..ということで、

街に出るとたくさんの気づきがあります。

 

以前、渋谷にある*『すずらん』というラーメン屋に入ったら、こんなものを見つけました。

 

『煮卵永久券』100円。

 

...。

 

うお..!と。

なんでしょう、これをみて自分はへんな興奮を覚えました。

 

3役のマーケティング機能を同時に兼ねる『煮卵永久券』

これは書いて字のごとくで、100円で『煮卵永久券』を購入すると、永久にそのラーメン屋の煮卵がついてくる券です。

 

通常、味玉というのはどこのラーメン屋にもあるトッピングメニュー、つまりいわばオプションであって、ラーメンの単価を100円(のところが多いと思う)を上げるものです。800円のラーメンであれば、12.5%売り上げアップです。

 

確かに美味いので、ついつい頼んでしまうニクい定番トッピングメニューであり、店舗側からするとラーメンのトッピングの中ではチャーシュー追加と同じくらいの頼りになるメニューだと思います。

 

ちなみにこの場合の味玉の持つ役割は「アップセル」です。

 

もしくは別のケースでは、味玉をトッピングにせずに標準でラーメンについてくるなんてケースもあるかもしれません。大概「味玉無料」とか書いてあります。

これがあることでラーメン屋の店先前まで来た顧客の最終決定の決め手になったり、もしくは隣にあるラーメン屋よりも他店に入らないように、優位性を持たせることができます。

 

この場合の味玉の役割は「購買決定を促すのためのお得感」だったり、「競合優位」です。

 

では、『煮卵永久券』の役割は何でしょうか。

それは、

 

初回のアップセル × クーポン × 限定会員証

 

です。

従来の味玉同様、初回の注文で100円の単価をアップさせつつ、次回の来店促進のためのクーポンと会員券の機能を兼ねそなえています。

 

また、"有料で購入している"という点もポイントで、たとえ『煮卵永久券』を無料でもらったところで、その存在を忘れてしまったり、なくしてしまい、それほど使われない可能性がありますが、(自分などはビッグカメラのポイントカードなどは、数千円溜まっていてもなぜか何回も紛失してしまう)自分で購入するという意思決定をし、お金を払って手に入れるというアクションを経ることで、購入者の中のその価値が自ずと高まります。いわば『煮卵永久券』は、有料で手に入れた限定会員証のようなものです。

それに加えて、なにより「永久」という言葉の破壊力!

 

マーケティング施策と価格の織りなす絶妙なバランス

ここまでだとまあ、そんなに珍しいものではないのかもしれません。

初回で売り上げが100円増えても、次回から毎回味玉の原価分がかかるわけなので、長い目で見ると集客ができる代わりにコストは上がることになります。

 

ただそこで、このすずらんで素晴らしいと感じたポイントがあります。

 

それがこのすずらんの価格です。

メニューは以下の感じ。

中華麺 950円

担担麺 1,350 円

角煮麺 1,450 円

叉焼雲呑麺 1,550 円

涮肉麺 1,650 円

 

..普通のラーメンより1.2倍-1.5倍くらい高い!

ラーメンでこの強気価格..!そして、だからこそ『煮卵永久券』がリピート集客装置としての機能を果たしているッ!!

..と、そう感じたわけなのでした。

 

 

ちなみに大事なことを書き忘れましたが、味もとても美味しいです。

 

この『煮卵永久券』のリピーター促進モデルを今後のマーケティング施策に活かせないかと考えながらのラーメンは1,350円でも安く感じたのでした。

*現在は恵比寿に移転しています。

 

【追記1】

先日あらためて移転したあとの恵比寿の店舗に足を運んだら、この『煮卵永久券』はなくなっていました。その代わりに店内の雰囲気が高級ラーメン店といった趣になっており、商品の価格が平均して200円上がっていました。(もちろん味も相変わらずのクオリティでした。)

 

【追記2】

その日、私のとなりで食べていた男性は麺類1品とお椀1品ビール1杯を頼んでいたのですが、(30分ほどのラーメン屋のランチで)お会計は4,000円を超えており、プロダクトの質の維持と同時に、『ブランド形成』の大切さをあらためて感じたのでした。


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