最近では電車や道端でワイヤレスイヤホンをしている人を多く見かけるようになりました。調査会社BCNの2018年8月時点の調査でも国内のイヤホン販売数量のうち40%以上がワイヤレスイヤホンであるというデータがでています。
AppleのAirPodsに代表されるワイヤレスイヤホンの普及と連動して、多くの人が耳からも積極的に情報を得るようになり、今では『耳の可処分時間』というキーワードをしばしば目にするようになりました。
耳の可処分時間を有効に使う人の増加とともに音楽や音声のコンテンツが普及し、それと連動して聴覚からアプローチする音声の広告が少しずつ拡大しています。
これまでも音声の広告としてラジオ広告がありましたが、最近盛り上がりを見せている『オーディオアド』はこれまでの音声の広告と何が違うのでしょうか。
オーディオアドとは、その仕組みや利点、事例などをご紹介していきます。
オーディオアドとは?
オーディオアドとは、Spotify、radiko、ポッドキャストといった音楽のストリーミング配信や、インターネットラジオ音声メディアへの"デジタル音声広告"のことを指しています。
従来は音声による広告としてラジオ広告がありましたが、オーディオアドとは呼ばれていませんでした。
しかし、多くの音楽配信サービスやポッドキャストがメディアとしての価値が上がるにつれて、それら音声メディアを活用したデジタル広告である、オーディオアドと呼ばれるデジタルの音声広告手法が定義されつつあります。
象徴的な出来事として、2019年の一般社団法人ACCが運営するクリエイティブアワード「2019 59th ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」において、従来の「ラジオCM部門」が「ラジオ&オーディオ広告部門」へと名称が変更されました。
「オーディオアド」という名称は「オーディオ広告」「デジタル音声広告」など復数の呼び方があるデジタルの音声広告の呼び名の一つです。『radiko(ラジコ)オーディオアド』の商品名でもあることから、従来の音声広告であるラジオCMと区別するためにラジオ関係者を中心に使用されています。
日本ではまだあまり馴染みのないオーディオアドですが、欧米では既に普及し始めている広告手法の一つです。
アメリカのオーディオアドの市場規模
米IABの調査では、2023年度のデジタル音声広告の市場規模は、媒体側の売上で約1兆850億円と毎年2桁成長を続けており、音声広告は世界の広告市場において注目を集めるトピックの一つでもあります。引き続き音声広告への広告出稿は増えていくと考えられます。
日本国内のオーディオアドの市場規模
また、日本国内でもデジタルインファクトの調べにより年々デジタル音声広告の市場が拡大していくことが予想されています。
2020 年のデジタル音声広告市場規模は前年から229%成長し、16 億円規模へ。さらに2022年以降急速な市場拡大が進み、2025年には420億円規模になると見込まれています。
このように日本でも今後のさらなる成長が期待できます。
オーディオアドの仕組み
そんなオーディオアドですが、これまでのラジオ広告とは何が違うのでしょうか。
ラジオ広告では1つのコンテンツに対して差し込まれる広告が決まっているため、どんな人が聞いても同じ広告が流れます。
それに対してオーディオアドは用意された広告枠を聴取しているユーザーの属性や趣味嗜好に合わせて差し替え配信します。
つまり、全員に同じ広告が届くわけではなく、それぞれの人に合わせた広告を届けることが可能です。
これは、広告を差し込む音声コンテンツの広告枠を準備し、ユーザーに合わせた広告を配信するための技術を駆使することによって実現します。DMPを活用したファーストパーティーデータやDSP側での掛け合わせるサードパーティーデータによるターゲティングも可能です。
オーディオアドの特徴
オーディオアドの特徴と利点についても解説をしていきます。
ターゲティング
ユーザーの属性や趣味嗜好に対してのターゲティングができるようになったため、これまでのラジオ広告では実現できなかったユーザーのシチュエーションやデモグラフィック情報などに応じた高いターゲティングによる広告配信ができます。
例えば、性別や年齢、聴取コンテンツなどでターゲティングができ、サードパーティーデータと掛け合わせることにより、より細かなパーソナライズされた広告配信が可能になることで、効率よく届けたいユーザーに届けたい広告を届けられます。
完全聴取率の高さ
Spotifyやradikoのような音声アプリによるオーディオアドの特徴として完全再生数の高さが挙げられます。オンデマンドの音声アプリのオーディアアドの場合、動画広告のようにスキップできてしまう広告と異なり音声広告をスキップすることができないため、広告価値の低いインプレッションによる配信数の請求が起きにくいのも特徴です。
そのため、音声アプリのオーディオアドでは配信した広告を確実にユーザーに届けることができ、完全聴取率も高い水準となっています。
ブランディング性能の高さ
様々な調査によって音声広告がブランディングと相性が良いことがわかっています。
Nielsen Media Labの2017年の調査結果
例えば、Nielsen Media Labが2017年に公開した調査結果では、Spotifyオーディオアドでは一般のウェブサイトのディスプレイ広告に比べて、ブランド想起が24%アップ、関心・購買意欲が2倍、広告理解が28%アップしたという調査結果が出ています。
BBCが音声と脳活動について行った調査
また、BBCが音声と脳活動について行った調査でも音声の効果の高さが示されています。
まず、音声コンテンツの聴取スタイルとして94%のポッドキャストリスナーは何かをしながらの聴取スタイルである”ながら聴き”をしていました。この”ながら聴き”という聴き方はブランドへのエンゲージメントを高めるという結果が出ています。
さらに、ポッドキャスト内でブランドについて触れられた際は、他のコンテンツに比べてエンゲージメントが16%高くなり、メモリエンコーディングが12%高くなることがわかりました。
また、ユーザーがアクティブであるとエンゲージメントや長期記憶が更に上がることもわかりました。
このようにオーディオアドとブランディングは相性が非常に良いことがわかります。
邪魔に感じにくい
Adobeが行った音声広告に関する調査(18歳以上の米国の消費者1,000人を対象に調査した「2019 Voice Report」)によると、下記のような結果が出ました。
25%の人はスマートスピーカーで音声広告を聞いたことがあると答え、その多くの人が問題ないと回答しました。実際、消費者の43%が、音声広告はテレビ、印刷物、オンライン、SNSの広告より押し付けがましくないと答えました。さらに、42%の人は音声広告は他のチャネルの広告より興味を引くと回答しています。
なおスマートスピーカーを所有している72%のユーザーが音楽再生をメインに利用しているそうです。
オーディオアド事例
オーディオアドの事例はここ数年で日本でも増えてきました。
その中でもradiko、Spotify、ポッドキャストの事例をご紹介します。
radiko
radikoは、パソコンやスマートフォンでラジオが無料で聴けるサービスです。
radikoはラジオを聞く人々に一律に同じ広告を配信していた手法ではなく、過去に聞いた番組データや会員データ、位置情報からパーソナライズされた広告配信をする『radiko(ラジコ)オーディオアド』をリリースしました。
radiko(ラジコ)Ad Sales Guideより(※許諾を経て掲載)
radikoではradikoが持つ全国各地の放送局から差し替え可能な広告枠を取得し、それぞれが持つ良質なコンテンツの間に広告を挿入する事が可能です。
また、プログラマティック配信では運用だけでなく位置情報ターゲティングやブランドリフト調査など、データを活用した配信も可能です。radiko(ラジコ)オーディオアドの詳しい内容は『ラジコ(radiko)オーディオアド プログラマティック広告配信』から確認することができます。
Spotify
世界で約2.5億人以上のユーザー数を誇る定額音声サービス『Spotify(スポティファイ)』では、無料ユーザーに対し楽曲間のブレイクに最大30秒の音声広告を配信することができます。
Spotifyアプリ使用ユーザーに対し、年齢、性別、エリア、音楽ジャンル、プレイリストのような多彩なセグメントターゲティングが可能なことが特徴です。
オトナルのSpotify音声広告配信パッケージ
オトナル社では、Spotifyオーディオアドの広告配信をワンストップ支援するサービス『Spotify音声広告配信』を提供しています。
ポッドキャストオーディオアド
ポッドキャスト番組に、CPM(ダウンロード数に応じた)課金、ターゲティング可能という性質を持つ音声広告の配信が可能です。
これにより、これまでのディスプレイ広告ののようなデジタル広告同様、予算に応じて広告配信量で課金される音声広告の広告出稿が可能となっています。
配信面としては、各種ポッドキャストアプリ、スマートスピーカー、ウェブサイト上のプレイヤー配信面へマルチプラットフォームで配信が可能です。
オトナルのポッドキャストオーディアド媒体資料より
音声アドネットワークである『ポッドキャストオーディオアド』では、大手ラジオ局や新聞社がポッドキャストとして配信する音声番組に音声広告の配信をおこなうことができます。
資料は音声アドネットワーク『ポッドキャストオーディオアド』からご覧いただけます。
さらなるオーディオアドの活用例
デジタル音声広告 for リターゲティング
オーディオアドの効果的な活用例として、聴覚と視覚の広告を連携させオーディオアドを聴いたユーザーに対して、ディスプレイ広告や動画広告でリターゲティングする方法が挙げられます。
記憶に残りやすいオーディオアドで音声広告で接触したのち、100%聴取完了した、もしくは聴取完了率の高いユーザーのみを追跡し、リターゲティングをすることができます。
この方法では聴覚へと視覚への広告接触を、別の広告チャネルで連動して行うことができるため、ブランディング・認知向上性能の高いオーディオアドと獲得やアクションに強いディスプレイバナー広告を組み合わせた広告運用が可能になります。この手法はデジタル音声広告市場で先行するアメリカでも活用されている手法です。
詳しくは、デジタル音声広告 for リターゲティングをご覧ください。
オーディオアド ブランドリフトサーベイ
ブランドリフトサーベイでは、デジタル音声広告におけるブランディング効果の可視化を、広告IDを連携させたパネル調査により実現します。
広告配信のプランニングにより音声配信のエリアや、接触日時、音声広告クリエイティブごとのパフォーマンスの計測比較も可能です。
認知向上やブランディングを得意とするデジタル音声広告の効果測定を、広告制作・出稿・ブランドリフト調査まで一気通貫に提供することで、音声広告における広告効果の見える化をより手軽に行う事が可能です。
詳しくは、オーディオアド ブランドリフトサーベイをご覧ください。
ジオターゲティング音声広告
ジオターゲティング広告では、リアルタイムな位置情報データと、履歴データを通じて「現在」「過去」の場所を踏まえたコミュニケーションを実現できます。
プログラマティック音声広告の配信時に位置情報データを利用し、ターゲットが普段どういう場所に行っているのかという観点からターゲティングができるプランです。また、広告を見た人が実際に来店したかどうかを計測することもできます。
詳しくは、ジオターゲティング音声広告をご覧ください。
ダイナミックオーディオアド(音声DCO)
リアルタイムに音声広告クリエイティブを変化させ、自動最適化して広告配信を行う音声広告プランダイナミックオーディオアドがあります。
ダイナミックオーディオアドでは、音声広告クリエイティブをリスナーデータやシチュエーションに合わせてリアルタイムに作成することで、広告主からのメッセージを音声メディアのリスナーひとりひとりにパーソナライズ化して語りかけるように、広告メッセージを伝えることができます。
各リスナーの日時、曜日、天候、気温、エリア、音楽の好み、デバイスといった状況や条件に基づいて、それぞれに適する音声クリエイティブを音源素材の組み合わせにより作成できます。
詳しくは、ダイナミックオーディオアドをご覧ください。
Podsights(ポッドサイト)
ポッドキャストのアトリビューションプラットフォームを運営するPodsightsは、広告主やブランドがポッドキャストを活用するためのツール「Podsights」を展開しています。
Podsightsを導入することによりポッドキャスト広告や、企業が運営するポッドキャスト番組でリスナーのサイト訪問やキャンペーン効果を計測することができます。
リード獲得に対する影響度や、ポッドキャストリスナーのサイト訪問率、広告出稿を行った複数のポッドキャスト番組の比較など、ポッドキャストにおける広告効果の可視化を行うことが可能になります。
オーディオアドの発展
アメリカでの市場成長が続き、今でも伸びていて、日本でもこれからの成長が見込まれるオーディオアド(デジタル音声広告)市場。
よりユーザーに最適な広告ターゲティングができる機能の向上や広告出稿が可能な媒体の拡大が日々進んでいます。
更にオトナルでは日本でも注目されるデジタル音声広告の市場について、『音声マーケティング最前線2024(成長する音声コンテンツとデジタル音声広告市場)』というレポートに市場とその動向についてまとめています。
音声広告について興味のある方はぜひ参考にしてみてください。
また音声広告の出稿にご興味がある方はデジタル音声広告媒体資料一覧からご覧ください。
Spotifyへの広告出稿をお考えの方は『Spotify音声広告配信』から資料ダウンロードいただけます。