インターネットラジオの代表格である「ポッドキャスト」の魅力はどこにあるのか。その配信者であるポッドキャスターへのインタビュー連載「ポッドキャスターに聴く」。
第8回は、『流行りモノ通信簿』のパーソナリティであるこへいさんとホネストさんに話を伺いました。
今年で15周年を迎える『流行りモノ通信簿』。ふたりが語るのは、自由なポッドキャストの世界について。ポッドキャストを始めた経緯や番組制作の裏側についてお聞きしながら、音声メディアの魅力や今後の目標を語ってもらいました。
『流行りモノ通信簿』が語る音声メディアの魅力
本記事では、『流行りモノ通信簿』のパーソナリティであるこへいさんとホネストさんに、ポッドキャストをはじめとする音声メディアの魅力を伺っていきます。
番組紹介:『流行りモノ通信簿』
ハヤツウこと『流行りモノ通信簿』は、こへいさんとホネストさんが配信する、「流行っているモノ=流行りモノ」をテーマにした情報バラエティ番組です。ゆるい雑談形式のトークが人気を集め、第2回JAPAN PODCAST AWARDSではリスナーズチョイスで9位にランクインしました。
一石二鳥のポッドキャスト配信
──『流行りモノ通信簿』を始めたきっかけは何ですか?
ホネスト:『流行りモノ通信簿』の1年ほど前に、中学校からの同級生3人と一緒にポッドキャスト番組『かけあがりラジオ』を始めました。当時、社会人になって数年という頃で、仕事でちょうど企画について担当していました。
そのときに感じていたのは、これから歳を重ねるにつれて、自分から新しい情報を取りに行けないと世の中から取り残される人になってしまうということ。「流行にアンテナを張る」ことを習慣化する方法を考えたときに、ポッドキャストとして配信することを思いつきました。日々のインプットにもなるし、番組というアウトプットにもつながる。一石二鳥の取り組みになるのではないかという思いがありました。
こへい:僕はホネストくんの『かけあがりラジオ』を聴き始めたことで、ポッドキャストに興味を持つようになりました。聴いているうちに自分でも話してみたいなと。ちょうど僕も、「流行に遅れたくない」という危機感を抱いていたので、ふたりで相談して、『流行りモノ通信簿』を始めました。

こへいさん
──番組はどんな人が聴いていますか?
こへい:特定の層に刺さるという内容でもないので、10代から60代まで幅広く聴いていただいています。その中でも自分たちと近い30代くらいの方がボリュームゾーンだと感じています。
ホネスト:私の印象も同じですね。年代だけでなく住んでいる国や仕事まで様々で、リスナー層の多様さを感じます。番組で取り上げた商品を開発された方や、番組で紹介した作家さんに聴いていただけることもあって驚きました。
こへい:企業の中の人からリアクションを貰うこともあり、そういうときにはヒヤッとしますね(笑)。商品の特徴や魅力をちゃんと伝えられているかどうか分からないので。
トークの要は相方を信じること
──番組づくりで大事にしていることは何ですか?
ホネスト:2つあって、「相手の話に素直に反応する」ことと「自分が楽しむこと」です。
『流行りモノ通信簿』を収録するときには、基本的に何を話すかを擦り合わせることはせず、タイトルのみ直前に共有して、収録時に初めて内容を知るというスタイルを採っています。なので、相手の話を初めて聴いたときに、率直にどう感じたか/どういう印象を持ったか、を忖度なく口に出すようにしています。自分をつくらず、自然体で話ができた方が、結果的に収録が楽しくなる気がしますね。
また、難しい言葉を使わないようにするのも意識していますね。音声編集でも、ノイズや言い間違いなどをカットしています。リスナーの方が聴いていて“引っかかる”要素をなくすように心がけています。
こへい:僕は意識的に、テレビのバラエティ番組にありそうな展開や進行をイメージして番組づくりをしています。そういう観点で、相方であるホネストくんのツッコミを信じることと、ホネストくんを泳がせるということを大事にしています。
『流行りモノ通信簿』でボケとツッコミがあるとしたら、自分はボケ担当だと思っています。ボケという役割の中で、強い言葉を使うことも必要であるとは思いつつ、強い言葉というのは相手のツッコミで打ち消してもらわないと成立しないのだと次第に認識するようになりました。
なので、僕はツッコミを信じてボケるのが『流行りモノ通信簿』であるべき姿だと思っています。話を切り出すのはボケ側である僕がほとんどなので、ボケ側が日和らず、相手のツッコミを信じるという胆力が大事だと考えています。
強い言葉を使ったために、自分で想像していた範囲を超えた受け止め方をされることや、嫌われてしまうこともあります。それは自分でも覚悟しているつもりですが、やはり実際に嫌われると辛いですね(笑)。嫌われてしまったときには、その理由や原因を見つめるようにはしていますが、改善できているかというと自信はありません(涙)
──番組づくりにあたって参考にした番組はありますか?
こへい:憧れという目線では、TOCINMASHさんが運営する番組を挙げたいです。ただ、参考にしているかという目線では、TOCINMASHさんのスキルが僕のはるか上空に位置しているため、あまり参考にできていません(笑)
憧れの目線でみている番組としては、『月曜トッキンマッシュ』『狭くて浅いやつら』『経営中毒〜だれにも言えない社長の孤独〜』『マンガ760』『りっちゃ・りょかちのやいやいラジオ』などです。
ホネスト:私は『マンガ760』や『いなみまもの好き勝手レイディオ』を中心に、リスナーさんの番組で興味のあるタイトルを聴いています。
15周年の『流行りモノ通信簿』
──『流行りモノ通信簿』は今年で15周年を迎えます
こへい:はい。ありがたいことに、15周年という節目を迎えることができました。今年はなにかしらのアニバーサリーイベントを、できればオフラインで実施したいなと考えています。
ホネスト:2020年の10周年のときには、コロナ禍でイベントができませんでした。『流行りモノ通信簿』として初めての主催イベントを実施したいですね。
──15年も番組を運営するには様々な出費もあるかと思いますが、マネタイズの取り組みは行っていますか?
こへい:マネタイズのために…という取り組みは特に行っていません。ただ、非常にありがたいことに、オトナルさんのおかげで、ホストリード広告(パーソナリティ読み上げ型広告)を実施させていただくことがあります。その際にはできる限り一生懸命取り組ませていただいております。
ホネスト:過去にはグッズの物販を行ったこともありますが、マネタイズを目的にはしていませんでしたね。
──初めて『流行りモノ通信簿』を聴く方におすすめの回はありますか?
こへい:変な話ですが、『流行りモノ通信簿』がこれまで何度かホストリード広告を実施する中で、毎回クライアントさまのオーダーを大幅に超える長尺の広告音源を作成させていただいています。
そして、可能な限り、広告っぽくない広告を目指して作成しています。『流行りモノ通信簿』のトーク内容において、唯一「考えてつくったモノ」としての色が濃いのが広告音源です。そういった意味で、聴いてみてもらいたいのは広告音源です(笑)
ホネスト:どの回も1時間近くあるので、初めての方にはなかなかハードルが高いかもしれませんが…。私のおすすめの回は、「バルミューダ」関連の配信回です。複数回ありますが、どれも編集をしていて楽しかったので、古いバルミューダ回から聴いていただくと、きっと楽しんでいただけるでしょう。
最近の回では、「EP.281 年をとると厄介になるメカニズムを考えてみた」。特に30代以上の方からの反響があって印象的でした。
「自分がやっていて楽しい」が一番
──今後の目標について教えてください
ホネスト:楽しみながら続けていきたい、というのが今の目標です。長くやっていると、いくつもの番組さんの休止や解散を目の当たりにします。聴いていた番組がなくなってしまう悲しさを味わってきたので、頑張りすぎず、ゆるりのんびりと自分のサードプレイスとしてポッドキャストを続けられればと思います。あとは、もっと多くの方に『流行りモノ通信簿』を知ってもらい、数エピソードだけでも良いので聴いてもらえるようにしていきたいです。
こへい:『流行りモノ通信簿』に限らず、自身のポッドキャスト番組全てに言えることだと考えていますが…。長年番組を継続できているのはリスナーさんがたくさんいてくれること、おたよりやSNS投稿など目に見える形で番組に関わりを持ってくれること、そしてそれが絶えず今も続いていることが非常に大きいと感じています。
その恩返しというと大げさではありますが、リスナーさんが「ハヤツウを聴いていて良かった」と感じられるような何かを返したいと思うようになりました。同じ番組のリスナーさん同士で仲良くなる人がでてきたり、番組のトーク内容のなにかが生活のどこかで登場して生活の中にハヤツウを感じたり…
どんな形でも良いのですが、ハヤツウを聴いて良かった、楽しかった、嬉しかった…リスナーさんにとってポジティブな作用を起こせるよう努力をしたい。今はそれが目標です。
──これからポッドキャストを始める人へのアドバイスをお願いします。
こへい:月並みではありますが、自分が楽しいことが一番かなと思います。僕はポッドキャスト活動をきっかけに知り合いになった人、交流を持つようになった人がたくさんいます。
人とのつながりは、僕にとって財産だなと感じていますが、その積み上げの最初の一歩は「ポッドキャストを始めてみた。収録楽しいな」というそれだけのこと。その根源的な楽しさが、様々な積み上げを支える土台になっているので、楽しむことを大切にしてもらいたいなと思います。
ホネスト:番組を始めると、どうしても「リスナー数」が見えてしまいます。わかりやすい指標ではあるのですが、リスナー数が思うように伸びないことで辞めてしまう番組さんが最近は多いと感じます。しかし、ポッドキャストの良いところは「定期的にする必要がない」「内容の規制がない」「時間の縛りがない」こと。「こうでなければならない」という決まりはありません。
「こうするとリスナー数を獲得できます」という情報があったりしますが、番組の内容によって正解は千差万別。こういった情報を過信せず、ぜひ「自分がやっていて楽しい」を一番にして、楽しんで続けてほしいと思います。
取材を振り返って
今年で15周年を迎える『流行りモノ通信簿』。長きにわたりリスナーに愛される番組の背景には、何よりもパーソナリティ自身がポッドキャストを楽しむことが大事だと実感できる取材でした。
インタビューにあたり、こへいさんとホネストさんから『流行りモノ通信簿』を紹介する音声コメントもいただいています。実際のおふたりの声で番組の魅力が語られていますので、ぜひお聴きください!
流行りモノ通信簿
連載「ポッドキャスターに聴く」では、今後もいろいろなポッドキャスターの方々にお話をお聞きしていく予定です。その他の記事も「ポッドキャスターに聴く」の一覧ページからチェックしてみてください。