一般社団法人ACCが運営する広告賞「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」。1961年より開催され、クリエイティブ業界における日本最大級のアワードとして広く認知されています。
2024年、メディアクリエイティブ部門で総務大臣賞/ACCグランプリに輝いたのは、日本マクドナルド株式会社の「オードリーのオールナイトマック」でした。テレビやラジオ、WEB、radiko、Spotify、マクドナルド各店舗で展開された本施策は、お笑いコンビ「オードリー」のファンだけでなく、多くの生活者にとって親しみやすいものとなりました。
本施策をクリエイティブディレクターとして主導したのは、株式会社TBWA\HAKUHODOの原口亮太さん。本記事では同広告施策の概要や施策後の効果、総務大臣賞/ACCグランプリ受賞に至るまでの取り組みについてお聞きしました。
本施策のために集まったクリエイティブスタッフの多くは、『オードリーのオールナイトニッポン』のリトルトゥース(ラジオ番組『オードリーのオールナイトニッポン』のリスナーの愛称のこと)だったそう。
ファン目線を大事にしながら、施策の細部にまでこだわり、SNSを中心に大きな反響を呼びました。
本施策の詳細とともに、原口さんが考える音声メディアの魅力や、今後挑戦したい取り組みについても語ってもらいました。
日本マクドナルドの「オードリーのオールナイトマック」制作の舞台裏とは?
「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」のメディアクリエイティブ部門で総務大臣賞/ACCグランプリを受賞した、日本マクドナルド株式会社「オードリーのオールナイトマック」。
本記事では、株式会社TBWA\HAKUHODOのクリエイティブディレクター・原口亮太さんに、本施策の詳細を伺っていきます。
動画広告:日本マクドナルドの「オードリーのオールナイトマック」
- 広告主:日本マクドナルド株式会社
- キャンペーン名:オードリーのオールナイトマック
- 媒体社:ニッポン放送
- 広告会社:株式会社博報堂DYメディアパートナーズ/株式会社TBWA\HAKUHODO
- 制作会社:株式会社ロボット
大人気ラジオ番組『オードリーのオールナイトニッポン』の魅力を広告コンテンツ化

株式会社TBWA\HAKUHODO クリエイティブディレクター・原口亮太さん
──今回ご担当された、「オードリーのオールナイトマック」について伺います。まずは商品の特徴について伺えますか?
原口(TBWA\HAKUHODO):日本マクドナルド「夜マック®」です。
17時以降のディナー帯になると、お得でちょっと贅沢なメニューが注文可能になります。
パティが倍になる「倍バーガー」や、マックフライポテト®(L)×1個とチキンマックナゲット® 10ピースの「ポテナゲ大」をお得に買うことができます。
──広告施策の概要についてお聞きします。企画立案のきっかけについて教えてください。
原口:きっかけは、ニッポン放送の大人気ラジオ番組『オードリーのオールナイトニッポン』が、東京ドームでのイベント開催(2024年2月18日に実施)を発表したことです。2023年3月のラジオ本放送で知り、メディアの仕事をする人間として、「何か一緒に実現できるのではないか」と直感的に思いました。
その際、長年担当させていただいているマクドナルドさんとのコラボを思いつきました。同時に、深夜のマクドナルドで、オードリーの若林正恭さんと春日俊彰さんがラジオのように自然体で話しているイメージも思い浮かびました。
──もともと原口さんは『オードリーのオールナイトニッポン』のリスナーだったのですね。
原口:はい。いわゆる「リトルトゥース」として、毎回放送を楽しみにしています。
「夜マック」は自分の担当カテゴリーではなかったのですが、自主提案を重ね実現に至りました。クリエイティブスタッフには、古くからのリスナーで、今回の企画に熱量高く共感してくれたメンバーを集めています。
細部までこだわったギミックで、オードリーファンに喜んでもらう
──今回の受賞について、どんな点が決め手だったと思いますか?
原口:近年ますます強まる超情報化社会の中で、ポッドキャストなどオーディオメディアへの注目が集まっていると感じています。その中で、現代ラジオの“頂点”である『オードリーのオールナイトニッポン』の魅力を、そのまま広告コンテンツ化できたことが、今回の総務大臣賞/ACCグランプリ(メディアクリエイティブ部門)の評価につながったと思います。
──クリエイティブには、クスッと笑えるようなギミックが溢れていますよね。
特に熱いリスナーが多いファンコミュニティと向き合うために、コピーやCM、店内放送コンテンツはもちろんのこと、SNS投稿ひとつひとつまで、ファンが見ても納得できる&盛り上がることができるクオリティを目指しました。
番組カラーであるラスタカラー3色を、マックポテトの赤黄&トレイの緑で表現したティザー投稿や、番組中でよく言及されているサトミツさん(佐藤満春さん)やTAIGAさん、ラジオスタッフの方々もエキストラとして出てもらいました。CMをよく見ていただくと、チラっと映っています。
──ファンにはたまらない演出ですね。
原口:ただ一方で、ラジオを知らない方も、オードリーの2人がテレビとはまた違う魅力を、この広告を通して表現したいと思いました。大変おこがましいですが、『オードリーのオールナイトニッポン』の広告にもできたらなと思っていました。
SNSで大きな反響。トレイマットを額縁に入れて飾るファンも
──広告施策の効果や、実施後の反響について教えてください。
原口:本キャンペーン実施後、ディナー帯の来客数が昨年比で伸長しました。これは「夜マック」の場所としての価値訴求に加えて、オリジナル音声コンテンツが夜のマクドナルド店内放送でのみ聴ける仕組みをつくったことも影響しています。
またSNSでは何度もトレンド入りすることができました。著名人も含めた多くのリスナーが、オードリーの2人が向き合って話すトレイマットを写真投稿してくれたことも要因のひとつです。一部のファンはトレイマットを持ち帰って、額縁に入れて飾ったりしていたりと、その熱量には驚かされます。
──音声施策において、原口さんが挑戦したいこと、今後実施したいことを教えてください。
原口:ラジオ広告が話題になることは難しいと思いますが、ラジオ番組などのオーディオコンテンツを活用した広告が話題になる可能性は今後も高いと思います。
テレビ番組と比較しても、視聴者の熱量が高く、出演者であるパーソナリティとのつながりも強固です。そういったメディア発コンテンツの文脈やファンコミュニティ熱量をそのまま活かした広告を、今後も作っていきたいと思います。
取材を振り返って
日本マクドナルド株式会社の「オードリーのオールナイトマック」は、大人気ラジオ番組『オードリーのオールナイトニッポン』のファンコミュニティに注目し、ディナー帯の来客数増加やSNSでの反響につなげることができました。
広告が好意的に受け止められたのは、原口さんをはじめクリエイティブスタッフが「リトルトゥース」だったからでしょう。エキストラとして出演したラジオ関係者や、オードリーの2人が着ている衣装。「夜マック」を楽しむお客様と、『オードリーのオールナイトニッポン』の親和性の高さも感じることができました。
今後もラジオやポッドキャストなど、音声コンテンツをきっかけにした優れたクリエイティブが生まれることを期待しています。