2023年、ポッドキャスト広告市場は顕著な成長を遂げています。IABとPwCの最新の研究によると、2020年から2022年にかけての米国におけるポッドキャスト広告収益は115%以上増加しました。この成長率はデジタル広告市場全体を上回り、2022年には26%増の18億ドルを記録しています。そして2025年までには約40億ドルに倍増すると予測されており、ポッドキャストはデジタル広告の新たな主役としての地位を確立しつつあります。
広告手法の変化とダイナミック広告挿入(DAI)の台頭
この市場成長の背景には、ポッドキャスト広告がブランド構築の手段としての地位を確立したことが挙げられます。以前は、ポッドキャスト広告は主に商品やサービスを直接購入してもらうための「ダイレクトレスポンス」が中心でしたが、今では企業ブランディングのための広告が増えています。この変化に伴い、「ダイナミック広告挿入(DAI:Dynamic Ad Insertion)」という技術が広告収益の大きな部分を占めるようになりました。DAIはリスナーがポッドキャストを聴くたびに、その時々で最も関連性の高い広告を自動的に挿入する技術です。これにより、広告主はリスナーに対してより適切なタイミングで、関連性の高い広告を提供できるようになりました。現在、DAIは広告収益の90%以上を占めています。
未開拓のポッドキャストにおけるプログラマティック広告
ポッドキャスト広告市場はまだ発展途上で、特に「プログラマティック広告」という自動的に広告を購入・配信するシステムの利用が他のデジタルメディアに比べて少ない状態です。現在、ポッドキャストでの広告収益のうち約11%しかプログラマティック広告ではなく、これは他のデジタルメディアの約87%と比べるとかなり低い割合です。裏を返せば、ポッドキャスト広告は自動化をもっと進めることで、これから大きく成長する可能性があるといえます。
ポッドキャストに求められる新しい広告手法
ポッドキャストの広告は、特定の番組に特化したタイアップのような広告が多くを占めています。一方で、特定のリスナー層をターゲットにして配信する広告は全体の約25%しかなく、多くの広告主がこの方法を使っていません。また、ビデオを含むポッドキャストはまだ全体の収益の小さな部分にしかなっておらず、リスナーを引き込むための大きな可能性がまだまだあると言えます。
生成AIの初期段階とその可能性
生成AIの使用はまだ初期段階にありますが、ポッドキャストリスナーやクリエイターはその使用に非常に積極的であると言えます。コンテンツのカスタマイズや最適化、広告運用など、さまざまな分野での活用が期待されています。
ポッドキャスト広告の展望
ポッドキャスト広告市場は成長の軌道に乗っており、多くの広告主にとって魅力的なチャネルとなっています。しかし、その潜在能力を最大限に引き出すためには、プログラマティックの拡大や広告主とのパートナーシップの強化など、さらなる成長を促進するための業界全体での革新と取り組みが必要となるでしょう。
調査を公開したIABについて
IAB(Interactive Advertising Bureau)は、オンライン広告業界の発展を促進する非営利団体です。デジタル広告の標準とガイドラインを策定し、業界の発展と統合を目指しています。インタラクティブなデジタルメディア企業が集まり、広告の効果測定、教育、法的問題などについてのリーダーシップを提供しています。
参照元:U.S. Podcast Advertising Revenue Study 2023: Drivers, Strategies, and Tactics for Growth
ダイナミック広告挿入(DAI)ってのはつまり、アドサーバーから音声広告配信を行なう方法のこと。あ、YouTubeに挿入される広告を思い浮かべるとわかりやすいかな。