ポッドキャストアワード大賞受賞からの書籍化。『子育てのラジオ「Teacher Teacher」』が子育て世代に支持される理由とは


インターネットラジオの代表格である「ポッドキャスト」の魅力はどこにあるのか。その配信者であるポッドキャスターへのインタビュー連載「ポッドキャスターに聴く」。

第2回は、『子育てのラジオ「Teacher Teacher」(以下、『Teacher Teacher』)』のパーソナリティである、福田遼(以下、はるか)さん、秋山仁志(以下、ひとし)さんに話を伺いました。

ポッドキャストアワード大賞受賞からの書籍化。『子育てのラジオ「Teacher Teacher」』が子育て世代に支持される理由とは

ふたりが目指すのは、「誰も否定しない」番組作り。ポッドキャストを始めた経緯や、番組制作の背景について伺いながら、音声メディアの魅力と今後実現したいことを語ってもらいました。

ポッドキャストアワード大賞受賞の『Teacher Teacher』が語る音声メディアの魅力

本記事では、『TeacherTeacher』のパーソナリティであるはるかさんひとしさんに、ポッドキャストをはじめとする音声メディアの魅力を伺っていきます。

番組紹介:『子育てのラジオ「Teacher Teacher」』


URL:https://teacherteacher.jp/

『Teacher Teacher』は、元小学校教員のはるかさんと、ラジオプロデューサーのひとしさんが送るポッドキャストです。子育て世代を中心に高い支持を得ており、第5回JAPAN PODCAST AWARDSで大賞と教養部門において最優秀賞を獲得しました。

一度はやめたポッドキャスト

──おふたりはどのようなきっかけでポッドキャストを始めたのでしょうか。

はるか:『Teacher Teacher』を始めたのは2023年4月なんですが、実は2022年にも4話だけポッドキャストを配信したことがあったんです。当時は教育のノウハウや子育ての困りごとに回答するという内容を発信していて、ちょうどひとしも教育について関心を持っていたので、ポッドキャストを始めてみました。

ひとし:そうですね。はるかの発信している内容と僕がポッドキャストをやってみたいという点がマッチしたという感じです。

はるか:そうやってポッドキャストを始めたんですけど、「これ誰が聴くんだろう?」と疑問を抱いてしまって。4話で更新をやめて、その後はインスタグラムやTikTokに活動の軸を移しました。特にインスタグラムでは、フォロワーの皆さんの悩みにひとつずつDMで返すなど、かなりの時間と熱量をかけて運営していました。

ポッドキャストアワード大賞受賞からの書籍化。『子育てのラジオ「Teacher Teacher」』が子育て世代に支持される理由とは

はるかさん(左)とひとしさん(右)

──どのように『Teacher Teacher』として再出発したのでしょうか。

ひとし:ちょうど去年の4月は、はるかが1年かけて世界中の教育現場を見て回ろうと海外にいく準備を始めていた頃です。帰国後は、海外で得られた知見を活かして日本に不登校の子どもが通えるフリースクールをつくるんだという熱い想いを持っていました。なおかつ、インスタグラムやTikTokで僕たちを応援してくれる方も増えてきたので、はるかの1年間を追っていくような番組が作れると思い、『Teacher Teacher』として再出発しました。

はるか:子育てをされている方は、日々、試行錯誤を繰り返しながらお子さんに向き合っていると思います。「正解」がない中で、「これでいいのかな?」と迷いながら子育てをされている方も多いのではないでしょうか。僕たちはポッドキャストを通じて、そんなお父さんやお母さんの心を軽くしたいと考えています。その目的を前提にしつつ、色々なプラットフォームの運営を試すなかで、再びポッドキャストに戻ってきたという感じですね。

──なるほど。再出発の背景には応援してくれる人たちの存在もあったのでしょうか?

ひとし:そうですね、再出発した直後から100〜200人の方が聴いてくださっていて、その多くはインスタグラムなどでフォローしてくれていた方々でしたね。

はるか:ずっと応援してくださっていた方の中には、今でも『Teacher Teacher』のチラシを作ってくれたり、ポッドキャストウィークエンド(ポッドキャスターが集まる下北沢開催のマーケットイベント)の企画に協力してくれる方もいます。とてもありがたいです。

「誰も否定しない」番組作り

──『Teacher Teacher』のリスナー層について教えてください。

はるか:やはり子育てをされている方々が多いですね。男女比は女性が6割で、男性リスナーも多いです。最近は教育現場に立つ先生方にも聴いていただいているようです。保護者と先生が共通の認識を持って子どもと関われることはとても良いことなので、先生が聴いてくれるのはすごく嬉しいです。

ひとし:意外な声として、仕事でマネジメントする立場の方が「コミュニケーションの参考になる」と言ってくださっています。そういう活用方法もあるのかとビックリしました。

ポッドキャストアワード大賞受賞からの書籍化。『子育てのラジオ「Teacher Teacher」』が子育て世代に支持される理由とは

JAPAN PODCAST AWARDS受賞式の様子

──番組を制作するにあたって、大事にしていることや心がけていることはありますか?

はるか:絶対に誰も否定しないことです。聴いてくれている方が、自分が責められている気持ちにならないことを目指しています。

最初の頃は、これまで学んできた理論をもとに、「正しさ」を突き詰めるような発信だったように思います。でも、実際に子育てをしている方々はそれぞれバックグラウンドが異なるので、必ずしも理論通りにはいきません。なにより、「正しさ」ばかり突きつけられても、聴いていて苦しいポッドキャストになってしまいますよね。

そういった姿勢を改め、僕たちは今、子育てをしている方に前向きになってほしい、心が軽くなってほしいという思いでポッドキャストを運営しています。身構えることなく、気軽に聴いてもらえるような番組になれたら良いなと思います。

ひとし:配信当時の感想で多かったのが「反省します」という声だったんです。自分で聴き返しても、最初の頃は少し言い方がきついなというのがあったと思います。

今は、編集していて「この言い方は誰かを傷つけそうだな」というセンサーも鋭くなってきました。配信を通じて、僕たちふたりの意識も徐々に変わっていきましたね。

──番組制作にあたって、他のポッドキャストを参考にすることはあるのでしょうか?

はるか:同じ子育て系のポッドキャストの『ママが自分を取り戻すラジオ』ですね。実際に子育てされているパーソナリティのすぎべさんの話を聞いて、「正しさ」だけでは子育ての悩みを解決できないことを痛感しました。

ひとし:僕は『ギチの完全人間ランド』です。仲の良い友だちと喋っている心地よい雰囲気やリスナーさんとの距離感を参考にしています。

番組の根幹は「Iメッセージ」

──初めて『Teacher Teacher』を聴く方におすすめの回はありますか?

ひとし:僕は第1回で話した「I(アイ)メッセージ」と、第2回で話した「ヨイ出し」をおすすめしたいです。「Iメッセージ」とは、主語を「私」にしたコミュニケーションの方法で、『Teacher Teacher』の根幹になっているテーマです。15分くらいの短いエピソードなので、聴いていただけると嬉しいです。

はるか:僕がおすすめしたいのは、Teacher Teacherが運営するオンラインフリースクール「コンコン」での支援の事例を紹介している回ですね。「不登校への行動論的包括支援アプローチ」という方法を参考に、周囲の大人が皆で支援していくという話だったり、すぐ子どもの行動変容を期待するのでなく、スモールステップで時間をかけて変化を捉えてみてはどうか、といった話をしています。

反響が大きいのは、森田直樹先生が提唱する「コンプリメント」の回ですね。この回は圧倒的にメッセージが多くて、「実践してみたら子どもとの関係が劇的に変わった」という声もたくさんいただきました。ぜひ聴いてみてください。

──番組や活動の継続にあたってはマネタイズも重要です。『Teacher Teacher』では、どのような取り組みをしているのでしょうか。

はるか:『Teacher Teacher』はポッドキャストだけでなく、オンラインフリースクール「コンコン」の運営など、様々な活動を行っています。月額課金のサポーター制度で支援を募り、現在は個人サポーター270人以上、法人サポーター4社に協力いただいています。

ひとし:最近はイベントなどに呼ばれる機会も増え、実施時に企画費などをいただいています。

──なるほど、どのようなイベントを行っているのでしょうか。

はるか:最近は、社会的養護施設の職員確保と定着を支援するNPO法人チャイボラや、プロバスケットボールチームの佐賀バルーナーズとイベントを行いました。いずれもその団体に所属している方が『Teacher Teacher』を聴いてくれていて、組織内に働きかけてくれたようです。

ポッドキャストで「50人の深い仲間」を作ろう

──先日、書籍『先生、どうする!? 子どものお悩み110番』が出版されました。

ポッドキャストアワード大賞受賞からの書籍化。『子育てのラジオ「Teacher Teacher」』が子育て世代に支持される理由とは

引用元:https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-85807-4

はるか:ポッドキャストで配信したことをもとに、再構成して書籍化しました。本を出版することは夢だったので、すごく嬉しいです。ポッドキャストで発信したことが文字になって、多くの方に届けられるようになって。ポッドキャストに夢を叶えてもらえた気がしますね。

ひとし:僕はまだ、あまり実感が湧いていません(笑)。でも、本をきっかけに僕たちの活動に興味を持ってくださる方もいると思うので、間違いなく貴重な機会だなあと思います。

──今度の目標などがあれば教えてください。

ひとし:とにかく続けていくことですね。『Teacher Teacher』の雰囲気や考え方に救われたという声もあり、僕たちの番組で少しでも助かる方がいるのであれば、とにかく続けていくことが大切かなと思っています。

はるか:ひとしと同じで、続けていくことに価値があると思っています。続けていくことで『Teacher Teacher』のコミュニティが広がって、みんなで助け合ったり、子どもと関わり合えるような仕組みも広がっていけば嬉しいです。コミュニティの輪を広げるためにも、多くの人に聴いていただけるよう頑張っていきたいです。

──最後に、これからポッドキャストを始める人にアドバイスがあればお願いします。

はるか:アドバイスと言えるか分かりませんが、僕は目的を意識すること、特に「誰に何を届けるか」の設計を大切にしています。台本を作るときも、聴いてくれる方のことをイメージしながら内容を決めています。

僕は、誰かにメッセージが明確に伝わらないと続けることができないタイプです。だからこそ、お便りやメッセージという形で反応してもらえるのは嬉しいですね。これからも続けていこうという原動力になります。

ひとし:ポッドキャストで、いきなり1,000人に聴かれる番組を作るのは難しいと思います。だからこそ最初は、50人くらいを想定しながら番組を初めてみるのが良いのではないでしょうか。ポッドキャストは「50人の深い仲間」を作ることに向いているメディアなので、「仲間と一緒にやりたいこと」があればぜひ挑戦してみてください。

取材を振り返って

「誰も否定しない」という番組制作のコンセプトや、リスナーとの距離を大事にする姿勢など、子育てをする親御さんを後押しするという思いがひしひしと伝わってくる取材でした。

10月には書籍『先生、どうする!?子どものお悩み110番』が出版されました。『Teacher Teacher』のおふたりの思いが込められた書籍、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

インタビューにあたり、はるかさんとひとしさんから『Teacher Teacher』を紹介する音声コメント(34秒)もいただいています。実際のおふたりの声で番組の魅力が語られていますので、ぜひお聴きください!

『子育てのラジオ「Teacher Teacher」』

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連載「ポッドキャスターに聴く」では、今後もいろいろなポッドキャスターの方々にお話をお聞きしていく予定です。その他の記事も「ポッドキャスターに聴く」の一覧ページからチェックしてみてください。


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