『情報メディア白書2024』(電通メディアイノベーションラボ/電通総研 編)が2024年3月1日に発行されました。このレポートの巻頭特集では音声メディアの潮流と活用可能性が取り上げられています。同特集では音声メディアの進化と聴取環境の整備がラジオ広告費の増加に寄与したことが示されています。
音声メディアの進化と聴取環境が広告費増加に寄与
電通より発表された「2023年 日本の広告費」によると、マスコミ四媒体の合計広告費は前年比で96.6%(2兆3,161億円)だった一方で、ラジオ広告費は前年比100.9%(1,139億円)と増加し、マスコミ四媒体のなかでは唯一3年連続の増加となりました。
ラジオ広告の広告費が増加している要因としては、従来のラジオ放送による聴取者に加え、radikoの利用者が増加したことが考えられます。また、2023年のラジオデジタル広告費が前年比127.3%(28億円)だったことから、コロナ禍において音声サービスの利用が拡大し、関連する広告費も増加したことが推測されます。
一方で、音声メディアの利用環境はコロナ禍以前から整備されつつあり、radikoやSpotify、Voicyなどの配信プラットフォーム、「ながら日経」や「朝日新聞アルキキ」などの既存メディアによる音声コンテンツ、audibleなどのオーディオブック、AmazonやGoogleなどのスマートスピーカーなどの普及をはじめ、AIによる音声認識・音声合成技術の進化など、さまざまな側面で音声メディアに関するサービスの進化と広がりが進んでいました。
音声メディアの利用実態
電通が2023年7月に行った「音声メディア利用調査」によると、ラジオ放送やradikoの利用率は高年齢層になるほど増加し、音楽配信サービスは低年齢層に人気が集中しています。
音声メディアは様々なシーンで利用されており、特に起床時や身支度中、家事・育児中、雑用中といったシーンでの活用が動画やSNSと比較して高い比率となっています。
音声コンテンツの広がり
音声コンテンツの増加も音声メディアの成長を支えています。特に日本国内ではポッドキャストの人気が高まっており、2023年10月時点でSpotifyで聴取できるポッドキャストのタイトル数は500万を超えています。また、オーディオブックにも注目が集まっており、新たな取り組みやコンテンツの増加が予想されています。
こうした中で各社も新たな取り組みを展開しています。ラジオ放送局もデータドリブンな広告セールスや新しい番組制作に取り組んでおり、業界全体が盛り上がりを見せています。
「耳の可処分時間」の争奪戦
コロナ禍によるリモートでの就業や学習でイヤホンを装着する機会が増えたことで、自分の耳の環境を自由にコントロールできる「耳の可処分時間」が増加しました。今はさまざまなプレーヤーが「耳の可処分時間」の争奪戦に参画しています。
現在の音声メディアは従来のラジオ放送で求められていた音楽や娯楽、ニュースに加え、自己研さんや集中といった動機や目的を取り込みつつあります。
また、Z世代と呼ばれる若年層に対してコンテンツや広告を届けるには、メディアの特性だけではなく、どのような目的・利用シーンでの接点となるのか、目と耳の注意をどれだけ引ける接点なのかなどを洞察した上で、目と耳の「感覚器ニュートラル」なプランニングが重要であると考察されています。
さらなる成長が見込まれる音声メディア
『情報メディア白書2024』では、音声メディアの進化と聴取環境の整備がラジオ広告費の増加に寄与したことが示され、音声メディアのさらなる成長への期待がうかがえます。
オトナルでも、2024年3月に第4回となる『ポッドキャスト国内利用実態調査』を発表しました。今回の『ポッドキャスト国内利用実態調査』では、ポッドキャストをはじめとする24メディアの利用実態比較を交えた調査レポートを行っています。『ポッドキャスト国内利用実態調査』の資料ダウンロードはこちらからどうぞ。
『情報メディア白書』とは
『情報メディア白書』は、電通メディアイノベーションラボ/電通総研が手がけ、ダイヤモンド社から刊行されている情報メディア産業にまつわるデータブックです。今回の2024年版で31回目の刊行となっています。13分野の情報メディア産業(新聞/出版/音楽/劇映画・映像ソフト/アニメーション/ゲーム/ラジオ・テレビ/衛星放送・ケーブルテレビ/通信/オンラインサービス/広告/通信販売/イベント)の業界動向が解説されています。
参照元:「耳の可処分時間」が拡大!デジタルサービスで活性化する音声メディア
音楽とラジオで利用年齢層が真逆だから、音声メディア全体で見ると補い合っている感じだね。