インターネットラジオの代表格である「ポッドキャスト」の魅力はどこにあるのか。その配信者であるポッドキャスターへのインタビュー連載「ポッドキャスターに聴く」。
第1回は、『News Connect〜あなたと経済をつなぐ5分間〜(以下「News Connect」)』を手掛ける音声プロデューサーの野村高文氏に話を伺いました。
「音声発信はリスナーと深い関係性を築くことができる」と語る野村氏。ポッドキャスト番組制作の経緯や、ながら聴きの効能などについて伺いながら、音声メディアの魅力を探ります。
『News Connect』野村氏が語る音声メディアの魅力
本記事では、『News Connect』を手掛ける音声プロデューサーの野村高文氏(Podcast Studio Chronicle代表)に、ポッドキャストをはじめとする音声メディアの魅力を伺っていきます。
番組紹介:「News Connect〜あなたと経済をつなぐ5分間〜」
URL:https://chronicle-inc.net/
Podcast Studio Chronicle代表で音声プロデューサーの野村高文氏が手掛けるニュース番組。平日版は1日1本、約5分間のニュースを配信しています。経営共創基盤 共同経営者の塩野誠氏を迎え、1週間のニュースを振り返る日曜版も高い人気を誇っています。
音声だからこそ築けるリスナーとの関係性
──野村さんはいつからポッドキャストを聴き始めたのでしょうか。
私がポッドキャストを聴き始めるようになったのは、2010年代からです。当時はTBSラジオがポッドキャストに力を入れていて、特に聴いていたのが『荻上チキ・Session-22』(現『荻上チキ・Session』)でした。徐々に、耳から情報をインプットすることが生活習慣に組み込まれるようになりました。
2015年に「NewsPicks」に入社したのですが、同じ年から定期的に、TBSラジオの「デイ・キャッチ!」という情報番組にニュース解説者として出演するようになりました。最初は月に1回でしたが、やがて週に1回出演するようになり、「生放送でニュースを解説する」というルーティンを毎週続けた結果、話す力が鍛えられていきましたね。
リスナーとしてポッドキャストに触れつつ、同時に発信者としての経験も積めたことが、音声メディアに深く興味を持ったきっかけです。
──なるほど、そうした経験が『News Connect』に繋がっていったのですね。
はい、NewsPicks在籍時には、社内での自主プロジェクトとして音声事業の立ち上げにもトライし、リスナーからの質問に答えるQ&A方式や専門家を招くゲスト方式など、様々なフォーマットの番組を試していきました。
その一環として2021年から『NewsPicksニュースレター』という、1日5分で経済ニュースをを解説するポッドキャスト番組を始めました。この経験が現在の『News Connect』にも活きています。
音声発信を続ける中で、テキストメディアよりもポッドキャストの方が発信者個人に対する反響が大きいことに気付きました。テキストメディアでは、誰が記事を書いたかはあまり覚えてもらえません。音声は、リスナーとの間に関係性を築きやすいのではと感じるようになりました。
──リスナーの反響で覚えているエピソードはありますか?
『News Connect』を始めたときですね。私は2021年末でNewsPicksを離れ、しばらく3〜4ヶ月ぐらいはゆっくり過ごそうと考えていました。しかし多くのリスナーから「退職されて寂しいです」「もうニュースはやらないんですか?」と聞かれまして。ありがたいなと思って、予定を2ヶ月ほど早め、2022年2月から『News Connect』を開始しました。
広い視野でニュースを捉えることが大事
──『News Connect』は毎日ニュースを配信していますが、運営やテーマ選定はどのようにしているのでしょうか。
運営は私一人でなくチームで行っています。どのニュースを伝えるか、グループチャットで提案や相談をしています。できるだけ新鮮な情報を届けることを重視しているので、収録は公開の前日に行っています。
テーマ選定に関しては、世界のメガトレンドに目を向けながら、大きな潮流を捉えることを意識しています。その事件や事故が起きたことで、今後の世界の流れを変える可能性があるかどうか。最近ですと、例えば米国の大統領選挙や、欧州の国政選挙で見られる右傾化などが挙げられます。
また、テーマに関しては「悪者探しをしない」ことも意識しています。特定の国家や集団、人物を悪者にするのではなく、対立が発生している構造や背景の情報を伝えることを重視しています。こういったコンセプトはチームのメンバーとも共有しています。
──番組の制作にあたって、何か参考にしたものはありますか?
ニュースの選定に関しては、海外メディアを参考にしていることが多いですね。英国の『BBC』や米国の『The New York Times』、また『The Economist』の「The world in brief」というページもチェックしています。
クリエイターエコノミーをポッドキャストでも
──『News Connect』のリスナー層について教えてください。
『News Connect』のリスナー層は20代から50代まで、幅広く聴いてもらっています。一番多いのは40代のビジネスパーソンですね。
男女比も半々くらいです。以前、番組イベントを開催したときに、老若男女幅広くお越しいただけたのは嬉しかったですね。中にはご家族で参加された方もいて、普段から『News Connect』を家族の会話のネタにしてくださっているそうです。
──番組の継続にあたってはマネタイズも重要です。『News Connect』では、どのような取り組みをしているのでしょうか?
月額課金のサポーター制度とスポット広告の組み合わせを行っています。これらの組み合わせで『News Connect』の運営が維持されています。
米国では、クリエイターエコノミー(主にインターネット上で、コンテンツやサービスを提供する個人が収益を得られる経済圏)が当たり前になりつつあり、特定の専門知識を持っている人がニュースレターやポッドキャストを運営し、生計を立てています。日本でもnoteやYouTubeを活用したクリエイターエコノミーが広がっていますが、これをポッドキャストでも定着させていきたいんです。
ただポッドキャスト運営にあたって、必ずしもマネタイズを目的にしなくても良いと私は思います。趣味のコミュニティづくりやネットワーキングなどを目的としたポッドキャストも素晴らしいことです。
「ながら聴き」でインプット量を飛躍的に伸ばそう
──初めて『News Connect』を聴く方におすすめの回はありますか?
平日版は毎日更新しているので、通勤や通学などのスキマ時間に、その日のニュースや自分が気になるトピックスのエピソードを聴いてもらいたいです。また休日など時間があるときには、塩野誠さんが出演する日曜版がおすすめです。バラバラに発生している世界のニュースが線でつながるように理解できるようになるはずです。
──「ながら聴き」で、良質な情報をインプットできるのは良いですね。
現代人は忙しく、波のように押し寄せてくる情報を全て処理するのは難しいと思います。だからこそ私は、ながら聴きをおすすめしたいです。
音声のながら聴きによって、これまでインプットに当てることができなかった時間を当てることが可能になります。インプット時間が劇的に増えるこの体験は、一度味わうとすごいですよ。
──最後に、今後の目標や、これからポッドキャストを始める人に何かアドバイスがあればお願いします。
これまで通りニュース発信を継続していきたいですね。番組を始めて2年半ほど経ち、さらに5年、10年と延ばしていきたい。そうすることでさらに、世界のメガトレンドを説得力ある形で伝えられると考えています。リスナーさんにもぜひ、継続的に聴いてもらえると嬉しいです。
同様に、世の中のポッドキャスターの皆さんにも、継続を頑張ってもらいたいです。ポッドキャストというのは、すぐに多くの人に届くメディアではありません。しかし続けることによって、リスナーとの間に確かな関係性を築くことができます。そんなメディアはポッドキャストだけではないでしょうか。移り気が早く、興味の対象もすぐに変わっていく現代だからこそ、個人も法人もポッドキャストを運営する価値があると思います。
取材を振り返って
世界の潮流を捉えるニュース選定やクリエイターエコノミーの実現など、野村氏が語る番組制作の裏側はとても新鮮でした。「音声のながら聴き」のインパクトを強調していたのも印象的です。
『News Connect』平日版は5分程度の短いエピソードです。本記事で興味を持った方は、通勤・通学などのスキマ時間に『News Connect』を聴いてみてはいかがでしょうか?
インタビューにあたり、野村氏から『News Connect』を紹介する音声コメント(35秒)もいただいています。実際の野村氏の声で番組の魅力が語られていますので、ぜひお聴きください!
News Connect〜あなたと経済をつなぐ5分間〜
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連載「ポッドキャスターに聴く」では、今後もいろいろなポッドキャスターの方々にお話をお聞きしていく予定です。その他の記事も「ポッドキャスターに聴く」の一覧ページからチェックしてみてください。