英国の公共放送BBCがポッドキャストに広告を導入する方針を表明したことに対し、民間メディアを含む20以上の団体が、広告導入の再考を促す公開書簡を発表しました。メディア業界に「壊滅的な影響」を与えるとして、公共放送の独立性を維持するための措置を講じるよう政府に求めています。
BBC年次計画にて、ポッドキャストへの広告導入を表明
BBCは2024年3月に発表した年次計画において、Apple PodcastやSpotifyなどのプラットフォームで配信されているBBCポッドキャストに広告を導入することを表明しました。2024年末から2025年の始めまでに、一部のポッドキャスト番組で広告導入が実施される予定です。
民間メディアが広告導入に反対する公開書簡を発表
BBCのポッドキャストへの広告導入の方針に対し、民間メディアを含む20以上の団体が広告導入に反対し、悪影響を危惧する公開書簡を発表しました。民間のメディア企業が競争力を失うなど市場にとって不健全であることや、BBCのサービスは商業的利益ではなく公共の利益のためにあることを指摘しています。
公開書簡にはポッドキャストプラットフォームなどポッドキャスト関連企業やテレビ局、ラジオ局、新聞社など様々な企業が加わっています。公開書簡に名を連ねたのは以下の通りです。
- ポッドキャスト関連企業:オーディオブーム、Goalhanger
- テレビ局:Channel 4、ITV、Paramount/Channel 5、Sky
- ラジオ局:Radiocentre
- 新聞社:News UK、Newsquest、テレグラフ
- メディア企業:Bauer、COBA、DMG Media、Global、Guardian Media Group、National World、News Media Association、Reach、Tortoise
公開書簡に加わったRadiocentreのCEOであるマット・ペイトン氏は、業界の大部分は広告の導入に反対しており、政府に対して迅速に行動をするよう求めたうえで、以下のように述べています。
視聴者はBBCのコンテンツに広告があると思っていません。なぜなら視聴者は既に受診料を支払っているからです。BBCは受信料から多額の資金を得ている以上、広告を求めるべきではありません。
BBCの独自の資金調達や独自の立場は、市場に深刻な影響を与えるだけでなく、英国のクリエイティブ業界にも広く悪影響を及ぼします。
英国ポッドキャスト市場におけるBBCの大きな影響力
英国のポッドキャスト市場ではBBCが大きな影響力を持っています。2023年第4四半期の英国のポッドキャストランキングではトップ25にBBCのポッドキャスト番組が6つランクインしました。
英国放送通信庁のレポートによると、ポッドキャスト聴取プラットフォームの利用率ではBBCの音声プラットフォームBBC SoundsがSpotifyに次いで2番手となっています。独自のプラットフォームを持ち、ニュースからコメディ、ドラマまで幅広く番組を展開するBBCが広告を導入することは、英国はもちろんのこと、世界のポッドキャスト市場にも影響を与えることが予測されます。
BBC Soundsとは
BBC Soundsは、英国の放送協会であるBBCが提供するデジタルオーディオプラットフォームです。ラジオ、音楽、ポッドキャストなど様々なオーディオコンテンツを一元管理し、リスナーに提供しています。BBC Soundsを通じて、リスナーはBBCの多彩な番組やポッドキャストをオンデマンドで聴くことができ、ライブイベントや専門チャンネルも利用可能です。
参照元:Open letter warns government of ‘disastrous impact’ of ad-funded BBC podcasts
公共放送としての立場と影響力の大きさの2つが争点になってるわけだ。