インターネットラジオの代表格である「ポッドキャスト」の魅力はどこにあるのか。その配信者であるポッドキャスターへのインタビュー連載「ポッドキャスターに聴く」。
第4回は、『ゆとりは笑ってバズりたい』(以下『ゆとバズ』)のパーソナリティであるゆとりフリーターさんに話を伺いました。
イラストレーターとしても活動するゆとりフリーターさんが目指すのは、ポッドキャストに限らない幅広い創作活動。ポッドキャストを始めた経緯や番組制作の裏側について伺いながら、音声メディアの魅力や今後実現したいことを語ってもらいました。
『ゆとバズ』が語る音声メディアの魅力
本記事では、『ゆとりは笑ってバズりたい』のパーソナリティであるゆとりフリーターさんに、ポッドキャストをはじめとする音声メディアの魅力を伺っていきます。
番組紹介:『ゆとりは笑ってバズりたい』
URL: https://yutorifreeter.com/
『ゆとりは笑ってバズりたい』は、ゆとり世代のフリーター・ゆとりフリーターさんが送る日常系1人語りのポッドキャストです。2023年には書籍『平成初期生まれは人間関係がしんどい』が刊行されました。
迷走前提で始めたポッドキャスト
──音声配信を始めたきっかけはなんですか?
ポッドキャストでの配信を始める以前から、「ツイキャス」というアプリで、顔を出さず音声のみのライブ配信をしていました。あるときリスナーから、「なんとなく面白いけど何も残らないね」というコメントがありました。
ライブ配信は楽しいのですが、そのコメントを見て、いつでもどこでも聴けるような場づくりも必要だと考えました。そこで始めたのがポッドキャストです。アーカイブとして残るので、いつも聴いてくれている方だけでなく、初めて聴く方向けのポートフォリオにもなるのではないかと考えました。

ゆとりフリーターさん
──番組名の由来を教えてください。
『ゆとりは笑ってバズりたい』という番組名には、「笑ってバズるためにはどうしたら良いか試行錯誤する」というニュアンスが込められていますが、迷走前提でどんな内容のポッドキャストをやっても良いように、飽き性な自分への対策として名付けた側面もあります(笑)
幼少期のころ、父から職場にいるクセのある人の話や都市伝説系のトンデモ話など、色々な「ここだけの話」を聴くのが好きでした。その影響で、番組でもバイト先の後輩の恋の相談に乗った話など「ここだけの話」を喋っています。
「なんか違うな」と思いながら喋り続けない
──番組はどんな人が聴いていますか?
メインのリスナー層は30代の男女です。お悩み相談のお便りをくれるリスナーは学生が多いですね。小学生からお便りをいただくこともあります。
連載漫画家の永谷えんがわ先生やプロレスラーの竹下幸之介選手も、『ゆとバズ』を聴いてくれていて驚きました。おふたりとも私と同じゆとり世代です。活躍されている姿を見るたび、私もがんばろうと思えるありがたい存在です。

書籍『平成初期生まれは人間関係がしんどい』を出版した際のトークイベントの様子
──番組作りで大事にしていることは何ですか?
ポッドキャストは「話す」ことが中心なので、話す内容やトーンは普段から意識していますね。
具体的には、
- 全体的に声の印象が暗くならないようにする
- リスナーが何を聴いたのかが手ごたえとして残るように良い感じにまとめる
- 可能な限り、一方的に誰かを傷つけない内容を意識する
- 自分のペースのまま話す(早口は開き直る!)
- 「なんか違うな」と思いながら喋り続けないようにする
といったことです。
また、自分のエピソードをリスナーに追体験してもらえるように、どんな感情の揺れ動きがあったかを細かく話すように努めています。
あと、何か意見を言うときには「そう思わない人もいるかもしれないけど、私はこう思う」というスタンスでいることにこだわっています。いちど本題から逸れて「そう思わない人もいるか!それも分かる!」などと挟むことで、反対意見の持ち主のリスナーが置いてけぼりにならずに話を聞き続けてくれるかな...と思っています。
──番組作りにあたって参考にした番組はありますか?
配信したいというモチベーションになれたのは、ゲーム実況者グループ『ナポリの男たち』の会員放送を見たことがきっかけです。サムネイル画像や企画の手作り感も参考にしていました。
よく聴くポッドキャスト番組はいくつかあって、女性一人語りトークの『あぶらうってこ』です。パーソナリティのうめしおさんが日常でふと感じたことから最近見た映画やコンテンツのお話まで、生活の一部としてずっと聴いていられるポッドキャストです。人柄が大好きで、特に心の葛藤が多めなところにシンパシーを感じ共感しながら聴かせていただいています
あと、コーチを生業にされているお二人がパーソナリティを務める『独立後のリアル』です。トークテーマが刺さることが多く、聴きながら内省のお供になる パーソナリティのはっしーさん、けいこさんの温かい空気感も安心して聴くことができます。
ポッドキャストをきっかけにイラストレーターに
──初めて『ゆとバズ』を聴く方におすすめの回はありますか?
「バイト先の残念なイケメンの初デート結果がなんかもうワロタ」ですね。バイト先にド派手なウォッシュ加工ジーンズで出勤してくる、通称ウォッシュ君の恋の相談に乗る仲だった私が聞いた初デート報告回です。意外な展開ばかりで楽しめると思います。ウォッシュ君本人は番組に登場しませんが、リスナーの人気はとても高いですね。
過去に反響の大きかった回は「コロナ禍で生まれた『back numberの水平線』は世界一やさしい」です。back numberのいちファンである私が、「『水平線』という楽曲のここの歌詞が好き!」と話をしています。
ありがたいことに、この回をきっかけに番組を聴き始めてくれたリスナーもたくさんいます。「水平線」は自分が嬉しいときも悲しいときも、様々な状況にあっても心に刺さることがある、本当に素晴らしい楽曲。配信回より、むしろ楽曲を聴いてほしいです(笑)
──番組を運営するにあたってなにかマネタイズの取り組みは行っていますか?
番組運営で直接生まれていると感じるマネタイズは、企業案件や、ポッドキャストウィークエンドなどのリアルイベントでの物販売り上げが中心です。その他、ポッドキャストをきっかけに始めた活動からの収益もあります。
──具体的にはどのような活動ですか?
リスナーの方から、ゆとりフリーター個人にイラスト制作の依頼をいただきました。先日は、ニッポン放送の『橋本直と鈴木真海子のCROSSPOD』に『ゆとバズ』を取り上げてくださったことが縁で、銀シャリの橋本さんからも依頼いただきました。橋本さんが放送当時の番組サムネイルのイラストを覚えてくださっていたようで、とても驚きましたね。
昨年は、オリジナル印刷グッズが作れる店舗「オリジナル印刷ワークスペース『さぽ助』」を開業しました。ポッドキャストをきっかけに活動の幅が広がっているのを実感します。
今後は音声×イラスト×印刷グッズを使って、色んなコンテンツを作って実験していきたいなと考えています。その先駆けとして一昨年にはゆとりフリーター新解釈タロットカードを作ったのですが、まだまだ未熟な点があるので、色々と勉強しながら進めていきたいです。

ポッドキャストウィークエンドにも出展。「ふんいき似顔絵」は大好評
目指すはポッドキャストに留まらない創作活動
──今後の目標について教えて下さい。
今後の目標は個展です!ポッドキャストに留まらない創作活動を目指しているので、音声をきっかけにしたモノづくりを増やしていきたいなと考えています。番組内で生まれた企画をリアルの場で表現したりと、やってみたいことも色々あり、夢は広がるばかりです。
イラストや印刷グッズをはじめ、ポッドキャスト以外でもコンテンツの幅を増やしていき、色々な窓口から『ゆとバズ』にたどり着いてくれたら良いなと思います。
──これからポッドキャストを始める人へのアドバイスをお願いします。
「こんなこと思ってるの自分だけかも……」と思っていることほど、発信すると面白い反応が得られることが多いです。トークの上手い下手よりも、話す時の熱量や温度感を大事にした方がリスナーにも伝わりますし、何より自分がのびのびやれるんじゃないかなと思います!……それが一番難しいってか!
取材を振り返って
音声×イラスト×印刷で新しい創作を模索するゆとりフリーターさん。喋り方や内容にもリスナーのことを考えた様々な工夫があり、番組制作への思いが伝わってくる取材でした。
インタビューにあたり、ゆとりフリーターさんから『ゆとバズ』を紹介する音声コメントもいただいています。実際のゆとりフリーターさんの声で番組の魅力が語られていますので、ぜひお聴きください!
『ゆとりは笑ってバズりたい』
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連載「ポッドキャスターに聴く」では、今後もいろいろなポッドキャスターの方々にお話をお聞きしていく予定です。その他の記事も「ポッドキャスターに聴く」の一覧ページからチェックしてみてください。