インターネットラジオの代表格である「ポッドキャスト」の魅力はどこにあるのか。その配信者であるポッドキャスターへのインタビュー連載「ポッドキャスターに聴く」。
第5回は、『ママが自分を取り戻すラジオ』のパーソナリティ・すぎべさんに話を伺いました。
第4回 JAPAN PODCAST AWARDSにおいて、『ママが自分を取り戻すラジオ』は「ウェルビーイング賞」を受賞しました。
すぎべさんはポッドキャストを通じて、子育て中の女性のための居場所づくりをしたいと話します。ポッドキャストを始めた経緯や、番組制作の背景について伺いながら、音声メディアの魅力と今後実現したいことを語ってもらいました。
ポッドキャストアワード受賞の『ママが自分を取り戻すラジオ』が語る音声メディアの魅力
本記事では、『ママが自分を取り戻すラジオ』のパーソナリティであるすぎべさんに話を伺い、音声メディアとの出会いやポッドキャストを始めた経緯、リスナーとの交流の楽しさについて語ってもらいました。
番組紹介:『ママが自分を取り戻すラジオ』
URL: https://lit.link/hellomemama
『ママが自分を取り戻すラジオ』は、子育て中の“お母さん”である、すぎべさんが配信するポッドキャストです。子育てや、お母さんの生き方についての話題で子育て中の女性を中心に絶大な人気を博しています。第4回JAPAN PODCAST AWARDSでは「ベスト ウェルビーイング賞」を受賞しました。
きっかけは「子育て中のお母さんのための居場所づくり」
──音声での発信を始めたきっかけはなんですか?
ポッドキャストをやってみたかったというよりも、子育て中のお母さんのための居場所づくりをしたくて発信を始めました。子育てをしているお母さんのしんどさや孤独感といった辛さは私自身の子育て経験でも感じていたので、そうした方々の居場所を作ろうと思ったのがきっかけです。
最初は、InstagramやX、noteなど様々なプラットフォームで発信を始めました。その中のひとつにポッドキャストがあって、今ではポッドキャストだけ継続できているという感じです。

すぎべさん
──なぜポッドキャストだけ継続できているのでしょうか。
自分の中で、音声が一番ハードルが低かったからですね。特に喋りに自信があったわけでもなく、その分、気楽に発信することができました。反対に、テキストメディアであるXやnoteなどは、文章を書くことへのこだわりからハードルの高さを感じてしまい、続けることを断念しました。
ポッドキャストを始める前は、「母親」という立場に関して少し自信をなくしていたとき。だからこそ一つひとつの発信をしっかり積み重ねることで、自分に自信を付けて、自分の中の「得意」を増やしたかったという思いもありました。
大事なのはリスナーに疎外感を抱かせないこと
──『ママが自分を取り戻すラジオ』のリスナー層について教えてください。
女性が8割ほどですね。特に30代〜40代の方が多いです。ポッドキャストアワードをいただいたことをきっかけに男性のリスナーさんも増えていますが、今も女性に聴いていただくことが多いです。
意外だったのは、海外在住の日本人リスナーさんが多いこと。「どうしてだろう」と不思議に思っていたのですが、海外での子育てはカルチャーギャップなどから孤独感を抱くことが多いそうで……。ポッドキャストに自分の居場所を求めて聴いてくださっているようです。
──番組作りで大事にしていることは何ですか?
リスナーさんに疎外感を与えないことです。昔から聴いてくださっているリスナーさんのことも大事にしつつ、新規リスナーの方に疎外感を感じさせたくないという点を気にしています。
これは最初から考えていたというよりも、リスナーさんが増えていくにつれて考え始めたことです。せっかく居場所を求めて聴き始めてくれたのに、内輪話に偏る、新規リスナーの方は入りづらくなる。私の子どものことを話すときも、子どもの年齢や性別を説明してから話し出すなど、初めての方も聴きやすい番組を目指しています。
──番組作りにあたって参考にした番組はありますか?
「その都度ちゃんと説明する」という点は、星野源さんの挨拶を参考にしています。認知度が高い方にもかかわらず、いつも必ず名前を名乗られている姿が印象的です。
聴く番組は時期によって変わるのですが、ずっと長く聴いている番組は、『シノブとナルミの毒舌アメリカンライフ』や『子育てのラジオ「Teacher Teacher」』ですね。『バイリンガルニュース』や『無限まやかし』も長く聴いています。
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──『ママが自分を取り戻すラジオ』では、どのようなマネタイズの取り組みをしていますか?
有料コミュニティを運営しています。VoicyやLISTENでの有料配信やギフト、グッズの販売、イベントなどを行っています。活動に対する寄付をいただくこともあります。グッズ制作はこだわると赤字になってしまうこともあるので難しいですね。
音声で発信する人を増やしたい
──初めて『ママが自分を取り戻すラジオ』を聴く方におすすめの回はありますか?
2つあります。1つ目は、517回の「幸せのハードルと最低賃金」。沼津で行われたポッドキャストフェスでも賞を授賞させていただいた回で子育てをしながらパート等で最低賃金で働くことへの葛藤や、自分自身の”価値”について考え、話しました。
2つ目は、577回の「女性の活躍って一体何?」。『サイエントーク』さんが中心となって行われている企画に参加したものです。こちらは社会では評価されにくい家庭での親の活躍について話していて、リスナーさんから大きな反響をいただいています。
──今後の目標について教えてください。
番組としては、今後も子育てをしているお母さんのための居場所づくりのために、これまで通り発信を続けていきたいと思っています。
私個人としては、音声で発信する人をもっと増やしていきたいですね。ポッドキャストは人生を変えるほど大きな可能性を秘めていると感じています。もっと色々な人が音声で発信し、より一層ポッドキャストや音声業界が明るく盛り上がってほしいと願っています。
──最後に、これからポッドキャストを始める人にアドバイスをお願いします。
ポッドキャストは、しっかり作ろうとすると意外と大変です。なので、まずは声で日記を付けるような感覚で、軽い気持ちで音声配信を始めてみるのが良いと思います。
最近だと、ポッドキャスト配信サービス「LISTEN」がオススメです。「LISTEN」では、短い分数で日記を書くように気軽に音声配信を行う「声日記」という取り組みが広がっています。「ポッドキャスト」だとハードルが高く感じている人でも、「声日記」だったら気楽に始められるのではないかなと思います!
取材を振り返って
お母さんのための居場所をポッドキャストで作り上げているすぎべさん。新規リスナーに疎外感を与えないようにする、何度も喋っていることでもちゃんと説明するなど、リスナーのことを考えた様々な工夫がこらされていて、すぎべさんの思いが伝わってくる取材でした。